カフェモンマルトル

text:高野雲

*

プレイズ・アンド・シングス/マット・デニス

      2017/05/30

Pocket

プレイズ・アンド・シングスPlays And Sings

粋人である。

通人である。

そして、彼を好む私もあなたも粋人である。

……か、どうかまでは分からないけど。

マット・デニス。

シンガー・ソングライター。

数多くの名曲を残している。

たとえば、このアルバムに収録されているものだけでも、《ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン》、《エンジェル・アイズ》。

さらには《コートにすみれを》に《エヴリシングズ・ハプン・トゥ・ミー》などなど、ジャズ好きにはお馴染みの、いや、ジャズ好きではなくとも、必ずどこかで耳にしているはずの名曲を残している。

しかも、弾き語りの名手でもある。

彼の歌とピアノには、軽妙洒脱な味わいがある。

大人の粋さを感じる。

声が柔らかくて上品なのだ。

力みがまったくない。まるで鼻歌のような軽やかな歌唱。

声を伸ばすときにかける微妙なビブラートも絶品だ。

彼のスタイルは、歌もピアノも、心憎いほどツボを押さえている。

大事なことも、穏やかな声でさらりと要点を抑えて伝えるタイプなのだろう。

彼の代表アルバム『プレイズ・アンド・シングズ』は、自作曲をクラブで弾き語った内容で、なかなか良い雰囲気のアルバムだ。

彼の奥さんが歌で参加している曲もある。

ほほえましくて、良い感じだと言う人も多いが、柔らかい彼の声に比べると、言っちゃ悪いが、夫人の声はちょっと元気が良過ぎるって感じがしないでもない。

“うまい素人”の粋を出ていない。

ま、2曲だけのご愛嬌だから、それほど気にはならないのだが。

楽しく、和気藹々な雰囲気が出ているから、アルバムの中のアクセントとしては丁度よいのかもしれない。

節回しの妙、ちょっとした崩しの妙。あくまでリラックス。

洒落た大人の時間をコーディネートしてくれる彼。

このようなタイプの歌い手、いそうで中々いないものだ。

記:2004/03/19

album data

PLAYS AND SINGS (Kapp)
- Matt Dennis

1.Will You Still Be Mine
2.Junior And Julie
3.The Night We Called It A Day
4.We Belong Together
5.Angel Eyes
6.Violets For Your Furs
7.Everything Happens To Me
8.Compared To You
9.That Tired Routine Called Love
10.It Wasn't The Stars That Thrilled Me
11.When You Love A Fella
12.Let's Get Away From It All

Matt Dennis (p&vo)
Mark Barnet (b)
Gene Englund (ds)
Virginia Maxey (vo)

1973/12/10

●関連記事
>>わたしはマット・デニスになりたい

 - ジャズ , ,