カフェモンマルトル

text:高野雲

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マイルス・イン・ザ・スカイ/マイルス・デイヴィス

      2017/05/23

Miles in the Sky (Reis)Miles in the Sky

1曲目の《スタッフ》。

淡々とした肌触り。

平板な8ビート。

エレキベースで簡素なリフを反復するロン・カーター。

ダイナミクスを押し殺したかのようなリズム刻むトニー・ウイリアムス。

リズムの上を漂うように、とりとめも無く、つかみどころの無いテーマが執拗に繰り返される。

決して音楽のほうからこちらに歩み寄ってくることがない。

ある種、無愛想な肌触り。

テーマの旋律には“ストーリー”的な起伏、いわば起承転結のようなものが無い。

しかも、このテーマの繰り返しが、5分以上も続く。

その間、演奏のテンションはクールに抑制されたままだ。

いつしか、肩透かしを食らったような、不安定な気分になる。

最初はよそよそしさを感じるかもしれない。

じわじわと少しずつ染みてくるタイプの演奏だ。

抑制を効かせた単調な繰り返しによって、聴き手は軽い夢遊状態に誘われる。

「8ビートを導入したマイルスの意欲作」。

『マイルス・イン・ザ・スカイ』は、そう語られることが多い。

たしかに、そのとおり。

しかし、重要なことは、8ビートはあくまで結果論。

8ビートのために8ビートを導入したわけではない。

8ビートの導入は、あくまで結果論だ。

マイルスの音楽的な意図は、もう少し深いところにある。

すなわち、アドリブの旋律以上に、音色とリズムをも含めたトータルなサウンドの“雰囲気”で、今までに無い音空間を構築しようとする試み。

結果的に、最適なリズムが8ビートだった、ということなのではないだろうか。

ジョージ・ベンソン参加も、このアルバムを語る上でのトピックスとしては欠かせない。

もっとも、参加はしてはいるが、参加している以上の何かは無い。

参加曲は、2曲目のみだが、彼のプレイは、いまいち、演奏の向かう方向や、コンセプトを理解しきれていない感じがする。

手がかりを求めて、手探りでギターを弾いているように聞こえるのだ。

「あの~、親分、こんな感じで良いんでしょうかねぇ?」と、冷や汗タラタラなベンソンの声が聞こえてきそうなギターではある。

この後、マイルスはベンソンを雇わなかった。

この事実が、この演奏の出来を証明しているといってもよい。

いずれにせよ、『マイルス・イン・ザ・スカイ』は、良くも悪くも過渡期的作品だと思う。

試行錯誤を繰り返すマイルスの実験過程の中間発表。

それ以上のものは感じないし、それ以下のものも私は感じない。

面白かったり、興奮状態に陥る類の音楽、ではないなぁ。

記:2009/03/01

album data

MILES IN THE SKY (Columbia)
- Miles Davis

1.Stuff
2.Paraphernalia
3.Black Comedy
4.Country Son

Miles Davis (tp)
Wayne Shorter (ts)
George Benson (g) #2
Herbie Hancock (p,el-p)
Ron Carter (b,el-b)
Tony Williams (ds)

1968/01/16(NYC) #2
1968/05/15-17(NYC) #1,3,4

 

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