カフェモンマルトル

text:高野雲

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困った時にはミルト・ジャクソン

      2017/06/14

どんなサウンドにも溶け込み、個性を発揮する

ミルト・ジャクソンのヴィブラフォンは、さりげなく凄い。

彼が叩き出すのヴァイブのサウンドは、ウェス・モンゴメリーのギターにしろ、マイルス・デイヴィスのトランペットにしろ、どんな楽器にでも溶け込んでしまう親和性の高さがある。

それでいて、溶けて一つになった音色に埋没するというわけでもなく、その音の中からは、ミルト!としか言いようのない存在感をも放つところが、やはり、さり気なく凄いとしか言いようがないのだ。

したがって、彼は、誰とでも共演できるだけのキャパシティがあるだけではなく、相手の中に溶け込みながらも、自分自身の個性をキチンと出せるだけの音の存在感があるのだ。



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ゴルソンカラーがミルトカラーに染まる

例えば、このアルバム、「バグス・オパス』。

これは、ミルト・ジャクソンと、ベニー・ゴルソン&アート・ファーマーコンビの邂逅とでもいうべきセッションが収録されている。

《クリフォードの思い出》や、《ウィスパー・ノット》といったベニー・ゴルソンの曲が取り上げられていることからも分かるとおり、ゴルソン色の強い内容かもしれない。

しかし、ゴルソンのアルバムではないんだなぁ。

強烈に主張するわけでもないのに、ミルト色が色濃く漂うこの雰囲気。

もとより、ゴルソン=ファーマーのコンビは2管が繰り出す音のアレンジが美しいが、これにミルトのヴァイブが加わると、さらに美しいハーモニーの誕生だ(ハーモニーは3音以上の音の重なりをいうので、ゴルソンとファーマーの2管の音だけでは、ハーモニーとは言わない)。

演奏に溶け込み、なおかつ、ふくよかさを加え、どんな相手の土俵の中でも、きちんと自分を出せるミルトのヴァイブ。

やっぱり、この人は名手だ。

こういうさり気ないアルバムが、さり気なくかかるジャズ喫茶が好きだ。

というより、困った時にはミルト・ジャクソン。

何をかけようか、何を聴こうかとジャズの選曲で迷った際は、リーダー作でなくても、MJQでなくても良い。ミルト・ジャクソンが参加しているアルバムをかければ、まず「ジャズな気分」と「ジャズなムード」を損ねることはないだろう。

記:1999/05/02

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