ジーニアス・オブ・モダン・ミュージック Vol.2/セロニアス・モンク

      2017/05/22

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ジーニアス・オブ・モダン・ミュージック Vol.2Genius Of Modern Music vol.2

セロニアス・モンクが作り出した曲の特異さを知るには、《スキッピー》を聴くのが良いかもしれない。

これは、1952年の3月30日に、
ケニー・ドーハム(トランペット)
ルー・ドナルドソン(アルトサックス)
ラッキー・トンプソン(テナーサックス)
という、3人のそうそうたるホーン陣をフロントに配したセッションの時に収録されたナンバーだが、聴けばお分かりのとおり、テーマのメロディにしろ、アレンジにしろ、どこかしら「ヘン」な要素がまとわりつく、かなりの難曲だ。

このナンバーを数回録音しているスティーヴ・レイシーですら、「この曲の研究は1週間で済んだが、演奏できるまでに半年かかった」とコメントしているほどなのだから、数回のリハーサルでレコーディングに臨む彼らホーン陣は、果たしていったいどこまでモンクの作る「奇妙な」曲のコンセプトを理解していたのかは定かではない。

しかし、さすがは3人とも第一線で鍛えられた卓越した技量の持ち主、この奇妙なナンバーを、一糸乱れぬアンサンブルで演奏しきっているのだ。

きっと凄まじいほどの集中力を要したことは容易に想像出来るし、彼らの集中力が、この演奏に異様な密度と迫力を与えている。

私がブルーノートに吹き込んだモンクのナンバーの中でもっとも好きなのは、もちろんこの《スキッピー》だ。

聴くたびに、この曲の圧倒的な個性に、ただただ「すっげ~」と感嘆し、ついでどういう表情でリアクションを取ればよいのか分からず、いつもニヤニヤしている。

後年録音され、最高傑作という評価の高い《ブリリアント・コーナーズ》も、演奏者の惰性を許さぬ小節割や、1コーラスごとにテンポが変わる設定など、かなり奇妙な構造を持つ難曲ではある。

しかし、この《スキッピー》という曲も、《ブリリアント・コーナーズ》ほど露骨ではないにしろ、負けず劣らず奇妙な難曲ではないかと思うのだ。

これら2曲のナンバーの特徴は、単に奇をてらっているだけではなく、演奏者を戸惑わせつつも、戸惑いの中からも演奏者の個性を絞り取ろうとするモンク流の「企み」が周到に配置されているように感じてならない。

秀曲でありながらも、この曲をカバーしているジャズマンが少ないのが残念。

油井正一氏によるライナーによると、スティーヴ・レイシー以外に《スキッピー》をレコーディングしたのは、テナーサックスのベニー・ウォレスただ一人だけなのだそうだ。

ブルーノートのモンクには、一生噛みしめるだけの価値のある秀逸な演奏ばかりなので、モンク入門者は、長い時間をかけて、少しずつ好きになっていけば良いと思うが、まずは、『vol.2』を購入したら、まっさきに《スキッピー》を聴いて、ぶっとんで欲しいと思う。

記:2010/12/04

album data

GENIUS OF MODERN MUSIC vol.2(Blue Note)
- Thelonious Monk

1.Carolina Moon
2.Hornin' In
3.Skippy
4.Let's Cool One
5.Suburban Eyes
6.Evonce
7.Straight No Chaser
8.Four In One
9.Nice Work
10.Monk's Mood
11.Who Knows
12.Ask Me Now

#5,6,9
Thelonious Monk (p)
Idrees Sulieman (tp)
Danny Quebec West (as)
Billy Smith (ts)
Gene Ramey (b)
Art Blakey (ds)

1947/10/15 #5,6
1947/10/24 #9

#10.11
Thelonious Monk (p)
Idrees Sulieman (tp)
George Taitt (tp)
Danny Quebec West (as)
Sahib Shihab (as)
Billy Smith (ts)
Robert Paige (b)
Art Blakey (ds)

1947/11/21

#7,8,12
Thelonious Monk (p)
Sahib Shihab (as)
Milt Jackson (vib)
All McKibbon (b) Art Blakey (ds)

1951/07/23

#1,2,3,4
Thelonious Monk (p)
Kenny Dorham (tp)
Lou Donaldson (as)
Lucky Thompson (tp)
Nelson Boyd (b)
Max Roach (ds)

1952/05/30

 - ジャズ , ,

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