アット・ジ・オペラハウス/スタン・ゲッツ&J.J.ジョンソン - カフェモンマルトル

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ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

アット・ジ・オペラハウス/スタン・ゲッツ&J.J.ジョンソン

      2018/07/16

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At The Opera House

2大スターの共演

破綻がなく、常に安定感のある演奏が続く。

1957年に、ヴァーヴ・レコードの社長であるノーマン・グランツが、まだ一度も共演をしていないゲッツとJ.J.を共演させようという企画のもと、プロデュースした。

集められたジャズマンは、ピアノが毎度おなじみオスカー・ピーターソン。ギターがハーブ・エリスでベースがレイ・ブラウン、そしてドラムがコニー・ケイというベテラン勢。

彼ら4人によるリズムセクションが、フロントの「2大スター」の伴奏をしっかりと勤める。
となると、もう演奏のクオリティは保証されたも同然だ。

アップテンポ2曲よりもバラード2曲

このアルバムの目玉は、アップテンポで奏でられる《クレイジー・リズム》や《ブルース・イン・ザ・クロセット》なのだろう。

しかし、彼らほどの名手だったら、これぐらいのクオリティの演奏はお茶の子さいさいだったはずだ。

肩慣らし曲のつもりだったのだろう、最初に演奏された《ビリーズ・バウンス》と同様に、気軽なジャムセッションのつもりでも、彼ら名手の手にかかると安定感あふれるハイクオリティな演奏になってしまうのだ。

おそらく《クレイジー・リズム》にしろ《ブルース・イン・ザ・クロセット》にしろ、肩慣らし曲の延長線上にある、「少しだけテンポがアップし、少しだけ気合いの注入が必要な曲」という程度の認識だったのかもしれない。

このアップテンポの2曲よりもむしろ個人的に注目しているのは、J.J.とゲッツ、それぞれ一人ずつの管楽器奏者にスポットがあてられたバラード2曲だ。

ひとつは《イエスタデイズ》。
これはJ.J.ジョンソンのトロンボーンがフィーチャーされている。
ゲッツは吹かない。

もうひとつは《イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド》。
スタン・ゲッツのテナーサックスがフィーチャーされている。
J.J.は吹かない。

J.J.とゲッツのバラード表現

上記2曲を聴けば、ゲッツとJ.J.それぞれが持つ資質、表現スタイルが見えてくるので興味深い。

《イエスタデイズ》を吹くJ.J.は、バラードでありながらも、かなり勇壮にトロンボーンを操る。
切ないバラードというよりは、ご立派な演奏というほうが相応しい。ズンズンと大股歩きでバラードしている。
こんな芸当が出来るのは、超絶テクニシャンであるJ.J.ならでは。

その一方で、スタン・ゲッツが吹く《イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド》は、しっとりとした情感が込められた吹奏だ。

少しかすれた音色で、さりげなくビブラートを織り交ぜながら。

特に後半で転調したテーマを吹く時の、じんわりとした盛り上げ方は、さすがゲッツ、上手いな~としか言いようがない。

面白いのはピーターソンの伴奏の違いで、J.J.が《イエスタデイズ》を吹いていた時は、けっこう煽り気味のピアノを弾いていたにもかかわらず、ゲッツの《イット・ネヴァー》では、しっとり&しんみりとした伴奏をつけている。

フロントの管楽器奏者のニュアンスを巧みに汲み取り、伴奏に反映させているところが、さすがヴァーヴではエラ・フィッツジェラルドなど、多くの歌手の歌伴を務めてきたピアニストならではのことはある。

いまいちマイファニー

バラードといえば、もう1曲。《マイ・ファニー・ヴァレンタイン》が収録されている。

《マイ・ファニー・ヴァレンタイン》好きのジャズファンは多いと思うが、これはあまり期待しないほうが良い。

特にテーマ部のアンサンブルでは、ゲッツとJ.J.は互いに足を引っ張り合っているような気がしないでもない。

もちろん、両者は相手の足を引っ張ろうと思って吹いてはいないだろうが、逆に相手への気遣いが、なんともいえぬテーマのアンサンブルを生み出してしまっている。
それでも、まとまってしまっているのが彼ら名手ゆえの力量ではあるのだが。

また、片方の管楽器奏者がソロを取っている間、もう一人の管楽器奏者が目立たぬように薄く伴奏を入れているのだが、これもあまり功を奏しているとは言い難い。

ゲッツのアドリブも、ステレオバージョンのほうでは、ゲッツお得意の必殺フレーズが脈絡もなく3回も登場してしまったりと、あまりこの曲に対してどうアプローチをするのか漠然とした演奏の設計図を持たぬまま演奏に臨んでしまっているような感じだ。

このアルバムで、バラードを聴くなら、やっぱり《イエスタデイズ》と《イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド》。
この2曲を聴いてラストの《ブルース・イン・ザ・クロセット》に突入、大団円を迎えるという流れが良いだろう。

記:2018/01/02

album data

AT THE OPERA HOUSE (Verve)
- Stan Getz & J.J.Johnson

1.Billie's Bounce
2.My Funny Valentine
3.Crazy Rhythm
4.Blues In The Closet
5.Billie's Bounce
6.My Funny Valentine
7.Crazy Rhythm
8.Yesterdays
9.It Never Entered My Mind
10.Blues In The Closet

Stan Getz (ts)
J.J. Johnson (tb)
Oscar Peterson (p)
Herb Ellis (g)
Ray Brown (b)
Connie Kay (ds)

#1-4 1957/09/29 at the Civic Opera House in Chicago.
#5-10 1957/10/07 at the Shrine Auditorium in Los Angeles.

#1-4 stereo
#5-10 monoral

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