ライヴ・アット・ザ・ブルーノート/オスカー・ピーターソン

      2017/09/24

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Live at the Blue NoteLive at the Blue Note

ブルースが感じられないピアニスト

マイルス・デイヴィスは、生前ピーターソンのピアノにはブルースが宿っていないと揶揄していたそうだ。

カナダ育ちということもあるのかもしれないが、確かにあっと驚く鮮やかなテクニックで奏でられるピーターソンのピアノは、ブルースを含め、どのような曲を奏でても常にブライトで、ダークな要素はあまり感じられない。

さらには、芯のある明晰なタッチから生み出されるドライブ感は、例えば同じ黒人ピアニストのソニー・クラークのようにダークな滲みを含んだノリとはずいぶんと趣を異にする。

屈折したニュアンスが皆無と言っても良いほどの屈託の無さだ。

どのような曲も安定感のある演奏で弾きこなし、危なっかしさは皆無。

この聴いているときの安心感と、彼のピアノが放つ明朗快活さからは確かにブルース特有の「訛り」のようなものは感じられない。



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ピーターソンの「訛り」

しかし、ピーターソンのピアノにも「訛り」がある。

少なくとも、クラシックのピアニストとは異なり、これがあるからこそ、たしかにマイルスが指摘したようなブルージーさは無いのかもしれないが、どこを切っても正真正銘ジャズピアニストとしか言い様のないノリとドライブ感を生み出す訛りだ。

これがよくわかるのが『ライヴ・アット・ザ・ブルーノート』の《ハニー・サックル・ローズ》だろう。

高速で奏でられるピアノのシングルトーンは、決してイーヴンな譜割りで弾かれているわけではない。

特に2拍目、3拍目あたりで、時折モゴモゴと音符が団子になるような微妙な訛りが感じられる。

もちろん、高速テンポの演奏であるため、すべての音符を均一で奏でることは、たとえテクニシャンのピーターソンであっても難しいのかもしれない(アート・テイタムだったら均一に弾いてしまいそうだけど)。

しかし、この均等すぎないタッチで弾かれるからこそ、生まれてくるドライブ感にリスナーやわくわくと心躍るのではないのだろうか。

バックにベースやドラムが付き添わない無伴奏の箇所だからこそ、如実にピーターソンの微妙なタイム感の伸張を感じとることができるし、オスカー・ピーターソンと言うピアニストは、決してどのようなナンバーも均等にこなす演奏マシーンではない事に気がつくことだろう。

ハーブ・エリスが渋い!

さて、このアルバムは、かつての盟友であるギタリストのハーブ・エリスをフィーチャーしていることもあり、このアルバムの聴きどころの半分は、ハーブ・エリスのギターだと言っても良い。

シャカリキに弾きすぎないところ。
ちょっと萎(しお)れた感じ。

ピーターソンのようビシッとした明確な輪郭とは対極ともいえる、しなやかで多くの言葉(音かず)を費やさずとも、相手の耳の中にいとも軽々と自分のギターの音を滑り込ませる説得力を持っている。

おそらく、ロックギター1年生のギタリストにとっては、渋くてオヤジすぎると感じるかもしれない。

それゆえに、あまりピンとこないギターなのかもしれないが、ジャズギターを初めて3年目でそろそろジム・ホールやジョー・パスにもトライしてみようかなと考えているギタリストが聞けば、「く~、こういうギターを弾いてみたい!」と思わせる音に違いない。

とにかく「いぶし銀」なのだ。

ダンディですらある。

パキパキと歯切れよくピアノを操るピーターソンとは好対照で、良い意味で互いの個性を引き立てあっているところが素晴らしい演奏が終始楽しめるのがニューヨークのブルーノートで行われたライヴ盤なのだ。

寿司?

個人的には《スシ》が、明るく元気にエキサイティングなので、調子が良いときにはよく聴いていたものだ。

安定して供給されるレイ・ブラウンの低音の上を心地よく疾走するピアノは、まさにピーターソンの面目躍如といった感じ。

それにしても、何で「スシ(寿司?)」なのだろう。

曲調はまったく日本的でも何でもないのだが、ホレス・シルヴァーも『トーキョー・ブルース』というアルバムでは、《サヨナラ・ブルース》、《アー・ソー(ああ、そう)》など、日本的なタイトルでありながらも、曲調はまったくもってラテンなナンバーを披露しているので、ネーミングにはあまり深い意味はないのかもしれない。

記:2017/08/14

album data

LIVE AT THE BLUE NOTE (Telarc)
- Oscar Peterson

1.Introductions
2.Honeysuckle Rose
3.Let There Be Love
4.Peace For South Africa
5.Sushi
6.I Remember You/A Child Is Born/Tenderly
7.Sweet Georgia Brown
8.Blues For Big Scotia

Oscar Peterson (p)
Herb Ellis (g)
Ray Brown (b)
Bobby Durham (ds)

1990/03/17
at The Blue Note, New York City

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>>ザ・トーキョー・ブルース/ホレス・シルヴァー

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