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ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

ピアノトリオ好きな人ほど、管楽器入りのアルバムをもっと聴こう!

      2017/12/22

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本当に「ジャズ」が好きなのか?

ピアノトリオばかり聴いている人は、きっと「ジャズ」が好きなのではなく、「ピアノ」もしくは、「ピアノトリオ」というフォーマットが好きなんじゃないかと思う。

もちろん、私もバド・パウエルやビル・エヴァンスのピアノトリオはよく聴くし、ピアノトリオというフォーマットも好きではあるが、ピアノトリオというフォーマットだけがジャズではないとも思っている。

せっかく、ジャズという様々な角度からの愉しみを享受できる音楽を愛好している以上は、ピアノトリオ以外のフォーマットにも目を向けたいと思っているし、極論すれば、ピアノトリオだけ聴いていても、ジャズという音楽の愉しみを半分しか味わえてはいないのではないかとすら思う。

だとすると、それはとても勿体ないことだという余計なお世話心が働いてしまうのだ。



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ピアノトリオは難しい

これは個人的な思い、というか、たくさんジャズを聴いてきた上で感じていることだが、ピアノトリオって難しい。

難しいっていうのは、聴くの難しいというのではなく、ピアニストやベーシスト、ドラマーなどの演奏者にとって、アルバムを全曲ピアノトリオだけで飽きずに聴かせるだけの演奏をすることって、かなり至難の業なのではないかと思うのだ。

演奏技術だけではなく、センスも必要かもしれないし、時にはプロデューサーからの要望を汲み取り、音で反映できるだけの柔軟さも必要かもしれない。

先述したバド・パウエルやビル・エヴァンスなどの「ジャズ・ジャイアンツ」は、もちろん別格だ。
しかし、彼らのような「ジャイアンツ」ではない普通のジャズピアニストが、たとえば8曲なら8曲、全曲最初から最後まで聴く者を飽きずに聴かせ続けることって、本当に大変なことなんじゃないかと思う。

そのうち飽きるのでは?それが怖い

今はCD時代だから、リスナー側も好きな曲だけを選出して聴けば良いという考えている人もいるだろう。

しかし、中にはレコード感覚で、最初から最後まで通しで聴こうというリスナーだっているわけで。

そういう人たちに向けて、バラードあり、アップテンポの曲あり、ボサタッチの曲あり、ベースやドラムをフィーチャーした曲ありと、アレンジや切り口に変化をつけて演奏したところで、それでも40分から60分持たせる力量って、結構大変なんじゃないかと思うのだ。

そうすると、どうなるか。

すべてのピアニストがそうというわけではないが、やはりアルバムの目玉となる曲を誰もが知るスタンダードに求めがちになるのではないだろうか。

また、多くの(日本の)ピアノ好きが求める要素は、やはりメロディだったりもすることを制作者(プロデューサー)も知っているため、選曲はスタンダード、アプローチもメロディアスなものを求めがちになるのではないだろうか(特に日本制作のピアノトリオのアルバムは)。

だから、今日もスタンダードナンバーオンパレードの日本制作版が録音され、オシャレなジャケットに彩られ、店頭に並び、ピアノトリオ好きが購入する。

もし、購入したリスナーが、その内容に満足できれば、それ以上、何も言うことはないのだが、気づけばCD棚には似たりよったりのピアノトリオのCDがズラリと並び、CDの枚数が増えるにしたがって、どれを聴こうか迷い、さんざん迷った末にセレクトした音源が思ったよりは今ひとつだった場合、だんだんジャズに対する熱が冷めていってしまうのではないか。

お節介ながら、私はそれが心配だ。

管楽器のアドリブの後のピアノが良い

ブルーノートの1500番台や4000番台には、思いのほかピアノトリオのアルバムが少ない。

おそらく、プロデューサーのアルフレッド・ライオンは分かっていたのだ。

よっぽどのことがない限り、ピアノトリオだけでアルバム1枚分でジャズのクオリティの高い作品を作ることは難しいと。

そして、「よっぽどのことがある」ジャズマンのみ、ピアノトリオの作品を残した。

私は、ピアノトリオが好きだ。

しかし、その好きなピアノトリオは、最初から最後までピアノトリオのフォーマットのものとは限らない。
トランペットがアドリブを取り、ついでテナーサックスがアドリブを取り、街に待った大好きなピアニストがいよいよアドリブを奏でる。
管楽器が抜けて、残るのはピアノ、ベース、ドラムのみになるわけだから、ピアノがソロを取っている間は立派なピアノトリオだ。

デューク・ジョーダンの『フライト・トゥ・ジョーダン』や、ケニー・ドリューの『アンダーカレント』など、ホーン奏者たちがアドリブを終えた後に勢いよく飛び出すピアノを味わうのもオツなものだ。

フライト・トゥ・ジョーダン+2

アンダーカレント

ファッツ・ナヴァロやソニー・ロリンズの後に飛び出す、「びっくりパウエル」のピアノも、本当に凄いし。

ジ・アメイジング・バド・パウエル Vol.1

トランペットやサックスなどホーン奏者たちと共演しているピアニストは、アドリブを取る他のジャズマンたちからの刺激を受け、時には実力以上の躍動感を演奏にもたらすことすらある。

自分より前にアドリブを取っていたジャズマンのソロが終了した後に、グワッと飛び出してくるときの最初のフレーズが聞き物だったりすることが少なくない。

そして、この「最初のフレーズ」って、ピアノトリオの場合だと、自分でイントロを弾いて、テーマを弾いて、その後にアドリブ、と自分ひとりで全部を組み立てていかねばならないわけだから、これら一連の作業が終わってから、いよいよアドリブとなったとき、いきなグワッと勢い良く飛び出せるかどうかは分からない。

管楽器奏者がアドリブを取り終わった後にピアニストが弾くときの気分と、ピアノトリオで自分がイントロやテーマを弾いた後にアドリブを弾くときの気分って、けっこう違うと思うんだ。

あと、「いよいよオレの番が回ってきた、いくぞ~!」という気持ちのエネルギーのようなもの?

この音に込められたエネルギーを享受する楽しみは、きっと最初から最後までピアノ+ベース+ドラムという編成では味わえないはず。

さらに、ピアノトリオだと、ホーン奏者のバックに回ったときのピアニストのバッキングを楽しむことが出来ない。

『ブローイン・ザ・ブルース・アウェイ』のホレス・シルヴァーなんか凄いよ。
アドリブをとっている管楽器奏者よりも多くの和音をピアノで連打しまくっているから。

ブローイン・ザ・ブルース・アウェイ+1

さて、そろそろ結論ね。

ピアノトリオ好きだからこそ、ピアノトリオのアルバムだけではなく、管楽器入りのアルバムをもっと聴いてみよう!
そこには、ピアノトリオとはまた違ったピアノの魅力を味わえるから!

以上でがんす。

記:2012/06/09

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