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ジャズと映画と本の日々:高野雲

ザ・クエスト/マル・ウォルドロン

      2017/05/23

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QuestThe Quest

ファイヤー・ワルツ

エリック・ドルフィーとブッカー・リトルの双頭コンボによる白熱のライヴ『アット・ザ・ファイヴ・スポット』。

At the Five Spot Complete EditionAt the Five Spot Complete Edition

このライヴ盤の中でもひときわ印象的なナンバーは《ファイヤー・ワルツ》だろう。

とぐろを巻くドルフィーのアルトサックスの咆哮と、抒情的なリトルのトランペットの対比が素晴らしく、白熱した演奏はジャズ史に燦然と輝く一ページとして記憶されている。

この曲は、ドルフィー&リトルの双頭コンボでピアノを弾くマル・ウォルドロンが作曲したナンバーだ。



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テンポの違い

ファイヴスポットのライブでは白熱した熱い演奏が繰り広げられていた《ファイヤー・ワルツ》だが、マル・ウォルドロンのリーダー作『クエスト』のラストを飾る同ナンバーのテンポはゆったり目。

それゆえに、この楽曲が持つ、淫靡かつ妖しい感じが増幅されている。

もちろん、このバージョンの演奏にもエリック・ドルフィーが加わっているのだが、同じ演奏者が参加しているにもかかわらず、またアレンジの似たり寄ったりであっても、テンポが違うだけでも、かなり趣きの異なる《ファイヤー・ワルツ》を味わうことが出来る。

ステイタズ・シーキング

とはいえ、このアルバムの目玉は《ファイヤー・ワルツ》にあらず。

やはり注目すべきは、冒頭を飾るナンバー《ステイタズ・シーキング》だろう。

テーマ終了後、猛然とスタートダッシュを切るドルフィーの雄姿!
ドルフィーに続くブッカー・アーヴィンのテナーも重たいスピード感がある。

チェロで参加しているロン・カーターのソロは、生来の彼のピッチの悪さが、ここでは良い方向に作用している。

ドルフィーのリーダー作『アウト・ゼア』と同様に、音程が曖昧なロンのチェロは演奏の異質さを際立たせるアクセント的存在として機能している。

最近の「ジャズ」でいえば、上原ひろみが自己のバンド、ソニックブルームのギタリスト、デヴィッド・フュージンスキーが奏でる変態チックにうねるギターと同様な役割を果たし、演奏に「異化効果」をもたらしているのだろう。

チャーリー・パーシップ

この《ステイタズ・シーキング》のカッコ良さの土台を形作っているのは、いうまでもなく、チャーリー・パーシップのドラミングだろう。

彼のドラミングは、たとえばエド・ブラックウェルなどが叩き出すリズムに比べると、少々軽い。そのかわりに、アップテンポにおけるスピード感は抜群だ。

スネアドラムにオカズやアクセントをいれるちょっとしたタイミングの良さが、演奏のスピード感に拍車をかけている。

だからこそ、ドルフィーやアーヴィンのソロの疾走感が心地よく聴こえるのだろう。

マルのピアノ

肝心のリーダー、マル・ウォルドロンだが、どうしても『ザ・クエスト』においては、ドルフィーやアーヴィンらのサックス、そしてヘンテコリンで妙に気になってしまうロン・カーターのベースのほうに耳を奪われがちで、なかなか最初は耳にはいってこないかもしれない。

むしろ、このアルバムでのマルは、個性際立つ彼らフロント陣の演奏を陰で支えることに喜びを見出しているように感じる。

マルのソロパートになっても、ドルフィーやアーヴィンらの個性的なソロを喰ってやろうというような勢いはなく、丁重かつ控えめですらある。

しかし、野心的なピアノは弾いていないかもしれないが、たとえば《ワープ・アンド・ウーフ》のピアノソロなどが、じんわりブルージーで味わい深かったりする。

また、ピアノソロの後に登場するアーヴィンやドルフィーのソロの背後で端正にバッキングをつける彼のピアノも良い。

恐ろしいほどの個性の持ち主たちと正面衝突をして張り合うことなく、むしろ、裏方役に徹し、彼らをさらに燃え滾らせ、良い結果を生み出したのが、『ザ・クエスト』に収録された曲群なのだ。

ドルフィー、アーヴィン好きは必聴のアルバムだ。

album data

THE QUEST (Prestige)
- Mal Waldron

1.Status Seeking
2.Duquility
3.Thirteen
4.We Diddit
5.Warm Canto
6.Warp and Woof
7.Fire Waltz

Mal Waldron (p)
Eric Dolphy (as,cl)
Booker Ervin (ts)
Ron Carter (cello)
Joe Benjamin (b)
Charlie Persip (ds)

1961/07/27

記:2016/06/03

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