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ジャズと映画と本の日々:高野雲

モンクの伴奏はサウンドエフェクトである

      2018/01/04

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SEとして捉えると、さらに面白くなる

セロニアス・モンクが管楽器奏者のバックでつけるピアノの伴奏(バッキング、コンピング)は、誤解を恐れずに極論すれば、ピアノレスサックストリオに付加されたSEなんですよ。

そう考えるとモンクのピアノがもっと面白くなる。

システム・エンジニアのSEではなく、サウンド・エフェクト、効果音のSEね。

よくジャズの入門書やジャズの評論を紐解くと、ピアノレス(ピアノがいないフォーマット)については、判で押したように「ピアノという楽器のコードの縛りがなくなった分、自由にアドリブを云々……」という記述を見かけますよね?

でも、フロントの管楽器奏者を縛るものって、ピアノの和音(コード)の響きだけなのでしょうか?

それだけではないでしょう。



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鍵盤を鳴らすタイミング

響き以外にも重要な鍵を握っているのは「タイミング」です。

管楽器奏者が意図的にフレーズとフレーズの間を空け、直前に吹いたフレーズや、次に吹こうと考えているフレーズに意味を持たせようとしている時に、ピアノがカコン!と和音を弾いたり、オブリガードを入れたりしたら、管楽器奏者の意図が台無しになってしまう可能性だってある。

だから、結構タイミングが大事だったりもするんです。

個人的には、ウイントン・ケリーやハービー・ハンコックが、伴奏をつけるタイミングが上手なピアニストだと思っています(本当はもっとたくさんいるけど、とりあえず、今ぱっと思いついたピアニストの名前を2名挙げてみました)。

では、セロニアス・モンクのバッキングは?

たぶん、コードの響きがコキンとかポキンとしていて不協和音っぽい響きが多いので、あまり一般的には管楽器奏者からは歓迎される響きではないかもしれない。

あくまで一般的にね。

エリック・ドルフィーのようにモンクとの共演を望んでいた管楽器奏者もいるので、すべての管楽器奏者がモンクの和音の響きを嫌っているというわけではないと思います。

それと先述したタイミング。

モンクが和音をペキン!とかコキャン!と鳴らすタイミングは一筋縄にはいかない。
時折突拍子もないところにも入れたりする。

だから、管楽器奏者が組み立てようとするメロディの流れを邪魔する可能性は大いにあるでしょう。
だからこそ、この「響き」と「タイミング」が自分のトランペットのアドリブの邪魔になるからってことで、マイルスの場合は、「オレがソロを吹いている間はバックでピアノを弾かないでね」とモンクにお願いしたのでしょう。

これは『バグズ・グルーヴ』と、『モダン・ジャズ・ジャイアンツ』の時のセッションの時のお話し。
たしかに、マイルスがトランペットを吹いている間はモンクのピアノが聞こえない。
マイルスのアドリブパートはピアノレスになっているため、メロディアスかつ流れるようなマイルスのトランペットが映えます。

マイルスは大先輩でもあるモンクの才能、実力を認めていつつも、モンクのピアノのスタイルと自分のトランペットは水と油のようあものだということを見抜いていたのでしょう。

さらには、通常の演奏を異次元の世界に異化させてしまうSE的な要素も孕んでいるということも感じていたのかもしれない。

ピアノレスでも成立する演奏に一石を投じる

チャーリー・ラウズが在団していた時のモンク・カルテットは、ラウズとドラマーとベーシストの3人だけで練習していたそうです。

つまり、モンク抜きでも、ラウズ以下の3人は、「ピアノレス・サックス・トリオ」としての演奏が成立するだけのクオリティはあったわけです。

そこに本番になるとモンクがやってきて、ピアノレス・トリオのサックスのバックで「キャコン!」とピアノを鳴らして効果的なアクセント(SE)を入れるわけです。

それも、ものすごくタイミングがよくて効果的な場合もあるし、なんでここに?とヘンなところに演奏の流れにクサビを打つこともある。

これはチャーリー・ラウズの時に限らずかもしれないけれども、管楽器奏者のバックでのモンクのピアノは、サウンドデザイナー、空間クリエイターとしての才能を発揮しているんじゃないかと思います。

時として一本調子に陥りがちなラウズの吹奏の位相をうまくべつのベクトルに誘導したり、演奏全体の熱量やボルテージをコントロールすることに成功しているのではないかと。

あくまで両者の役割分担を心得た上での共存関係だったと私は解釈しています。
むしろ、互いの個性がうまく引き立ちあった相乗効果を狙っているのでは?とすら思うくらいです。

そう考えながらモンクのバッキングを聴くと、同じ《ブルー・モンク》でも(彼は生涯、数えきれないほどこの曲を演奏している)、演奏された日付が違えば、また新鮮な新しい演奏として聴くことも出来るのかもしれません。

特に、チャーリー・ラウズは10年間モンクのグループに所属していたため、ラウズが参加していた時代のアルバムの数は多く、「またこの曲をやってるのか」、「またラウズのワンパターンアドリブか」なんて溜息が出ることも正直あるのですが、モンクはラウズのバックでどのような効果音を鳴らしてくれるのかな?とモンクのバッキングに耳の焦点を合わせれば、退屈することなく楽しめると思うんですね。

たとえば、ラウズと組んでいる頃のスタジオ録音盤ではなくライブ盤に、モンクならではの「お遊び的」かつ「SE的」なバッキングが入っているものが多い。
おすすめアルバムは色々あるけれども、『ライブ・アット・ジ・イット・クラブ』のモンクなんか、ラウズのバックで面白い伴奏をつけたり、まったく伴奏をするのをやめてしまう曲もあったりするので面白いですよ。

一聴をオススメします。

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>>セロニアス・モンクのアルバム
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