カフェモンマルトル

text:高野雲

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エヴァンスの《スパルタカス》

      2017/05/22

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ビル・エヴァンスの『ホワッツ・ニュー』といえば、エキサイティングな《枯葉》や《ストレート・ノーチェイサー》、それに《ソー・ホワット》などを聴いて手に汗握っていた私だが、このアルバムの中において隠れた名演、名曲に最近気が付いた(遅い!)。

《スパルタカス~愛のテーマ》。

これ、名曲です。
で、エヴァンスのピアノもいい。

選曲はおそらくエヴァンス自身だろう。
そして、おそらく弾きたくなった理由は、ラファロとの思い出なのだろう。

ラファロとエヴァンスはギャラの面で折り合いがつかず、ラファロは、ライブ中にベース弾きながら「ギャラ払え」などとエヴァンスを罵っていたこともあるとか。

しかし、喧嘩するほど仲がよいともいう。
エヴァンスとラファロは2人でよく映画を観に行っていたそうだ。

そして、ラファロが交通事故で亡くなる直前に二人で観た映画が『スパルタカス』。
スタンリー・キューブリックの最高傑作と評価する「通」もいるほどの素晴らしい映画だ。

穿った見方をすると、かの黒澤明も、『乱』においては、この映画の画面作りを参考にしたのではと囁かれる作品でもある。

晩年、マーク・ジョンソンが現れるまでは、エヴァンスにとっては最良のパートナーだったベーシスト、スコット・ラファロ。

音で自分を触発し、インスピレーションの源となったラファロの存在は、エヴァンスにとっては大きく、それが証拠に、ラファロの死後、エヴァンスは、ラファロの上着を着て街を彷徨ったこともあるという。

くわえて、なんとか立ち直り、音楽活動を再開するまで1年近くの時間を要している。

それだけ、人間としても、ジャズマンとしても大きな存在だったラファロと最後に観たのが『スパルタカス』。

エヴァンスにとっては、忘れようにも忘れられない映画になったことは想像に難くない。

エヴァンスにとって『スパルタカス』といえば、自動的にラファロのことが記憶の中でセットになっていたに違いない。

だからこそ、この曲を選曲し、実際演奏するにあたっては、相当の覚悟や気合いを要したのではないだろうか。

このような背景を知った上で、《スパルタカス》を聴くと、また違う味わいが出てくると思う。

『ホワッツ・ニュー』をお持ちの方は、是非、ご再聴あれ。

ちなみに彼は『自己との対話』でもこの曲を取り上げているが、自己とではなく、もしかしたら、ラファロと会話をしていたのかもしれないね。

記:2007/11/14

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