カフェモンマルトル

text:高野雲

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ライヴ・アット・ザ・トレード・ウインズ/チャーリー・パーカー&チェット・ベイカー

      2017/05/22

Inglewood Jam: Bird & Chet, Live At The Trade Winds 16 June 1952Inglewood Jam: Bird & Chet, Live At The Trade Winds 16 June 1952

パーカーとチェット・ベイカーの共演が売りのアルバムではあるが、ここではこのセッションに参加しているもう一人のアルトサックス奏者、そして優れたパーカー派の1人、ソニー・クリスにも注目したい。

おそらく、ジャズの初心者の方は、パーカーとクリスの区別がつかないかもしれない。

たしかに、音色、フレージング共に両者は似ている。

しかし、二人の持つ微妙な差異に気が付くようになれば、それはあなたの耳が肥えてきた証拠。

一気にジャズが面白くなる。

文章での解説には限界があることは重々承知しつつも、そのニュアンスを文字化してみると、あくまで音質が軽く、明快な斬れ味でサクサクッとプレイをするのがクリス。

軽やかさとスピード感をあわせもちながらも、どこかアルトの音色に重量感があるのがパーカー。

しかもパーカーの音色のほうが微妙なザラザラとした感触があり、そこが本当に微妙な違いなんだけれども、耳にこびりついて端なれないのか、それとも耳の右から左へと通り過ぎて忘れ去られるかの違いなのだと思う。

クリスの音色はパーカーほどのギラつき、ザラつきはない。どちらかというとクリーミーだ。

軽快な上に、耳にもサクッとはいってくる。

その分、パーカー的な不可解に歪んだ成分というものは無い。

この両者の微妙な違いがとても興味深い。

私は『トレード・ウィンズ』のパーカーとクリスの演奏を聴くたびに、ほんとうに微妙な皮一枚の差で、音の存在感の違い、風格や重みのようなものが決定されてしまうのだな、と痛感している。

スタイルは同じでも、音色やフレーズの中に込められたニュアンスの微細な違いがそのジャズマンの個性を決定づけてしまうのだ。

セリフは同じなのに、役者によって、その言葉の重みや役者の存在感が違うものに感じてしまうのと同じだ。

こと「個性の音楽」であるジャズにおいては、それが如実にあらわれてしまうところが、ジャズの怖さであり、また、面白さでもあるのだ。

記:2010/03/13

album data

Charlie Parker/Chet Baker "Live" At The Trade Winds June 16,1952 (Fresh Sound)
- Charlie Parker

1.The Squirrel
2.Irresistible You
3.Donna Lee
4.Liza

Charlie Parker (as)
Sonny Criss (as)
Chet Baker (tp)
Donn Trenner (p) #1,2,4
Russ Freeman (p) #3
Harry Babasin (b)
Lawrence Marable (ds)

1952/06/16
"The Trade Winds" Inglewood,Cal.

 - ジャズ , ,