トリオ'64/ビル・エヴァンス

      2017/09/24

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トリオ’64Trio'64

ピーコック効果?

ノリがいつもと違う。
⇒ひょこひょこエヴァンス。

演奏から漂う雰囲気が違う。
⇒微・ハッピーエヴァンス。

このアルバムで聴けるエヴァンスのピアノは、ほんのりと楽しそうだ。

ほんの少しだけど、暖かくほんわかとしている。

ベースにゲイリー・ピーコックが参加した唯一のアルバムとして有名な『トリオ'64』。

バッキングには躍動感あり、ソロになると饒舌、しかもガッシリとした確かな低音の輪郭を持つピーコック参加の効果も大きく演奏のムードに寄与していることは疑いない。

したがって、他のどのアルバムにもない独特なテイストを湛えており、大げさに言えば「異色作」と言えないこともないが、この「ひょっこり弾むエヴァンス」もエヴァンスの本質であることは変わりなく、リヴァーサイドの4部作のみでエヴァンスを「分かったつもり」になっている御仁にこそ手を伸ばして欲しいアルバムだ。



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明るさ100パーセントではないが、それでも

もちろん、レコーディング現場でのエヴァンスは本当に楽しくピアノを弾いていたのかどうかまでは分からない。

むしろ、その逆で、人間関係やギャラの問題などで、険悪に近い雰囲気だっとする説もある。

しかし、そのようなことが音楽に出てこないことがやっぱり一流のジャズマンは違うよねと思わせるところ。

ほんわかとした雰囲気を湛えてはいるが、だからといって「楽しさ全開」ではない。

エヴァンス特有の、ある種の屈折した美学が、たとえ楽しさ100パーセントであったとしても、それを全面に押し出すことを潔しとしないのだろう。

しかし、テレビアニメの主題歌《リトル・ルル》のテーマや、《サンタが街にやってくる》などの演奏を聴いていると、マッサージで肩の凝りがほぐれ、血のめぐりが回復した時のような、ほんのりとした温かさを取り戻した時のような感触があることも確か。

収録曲の多くがミドルテンポ。
全体的に楽しげなムードに覆われているのは、ミドルテンポだからこそのヒョコヒョコとしたノリにあるのかもしれない。

「半煮え感」も悪くない

エヴァンスは、バド・パウエルやレニー・トリスターノからの影響も受けたことを本人自身が語ってはいるが、絶頂期のバド・パウエルのように一気呵成に「ダダーッ!」と弾かないし、トリスターノのようにうねうねと息継ぎなしで鍵盤を弾き続けもしない。

ミドルテンポに乗っかり、ひょっこりひょっこりと楽しさを全開にさせることなく鍵盤を弾き続けるのだ。

この「半煮え感」は、エヴァンスならではこそ。

ガツーン!とはこない、なんとなくモヤモヤした感じ、それでも演奏としては「なんとなく」まとまってしまっている感じは、他のエヴァンスのアルバムには認められない独特な風情がある。

全体的にこじんまりとした演奏が多いため、エヴァンスを代表する名盤にはなり得ないのだろうが、休日の昼下がり、何もすることが無いときなど、この『トリオ64』のエヴァンスをなんとはなしに聞きながら、ほっこりするのも悪くはないのではないかと思う。

エヴァンスの長いキャリアの中、すべてが「ご立派」なアルバムばかりがあるわけではなく、このような「箸休め」的なアルバムと付き合いのも楽しいものです。

記:2017/04/29

album data

TRIO '64 (Verve)
- Bill Evans

1.Little Lulu
2.A Sleepin' Bee
3.Always
4.Santa Claus Is Coming to Town
5.I'll See You Again
6.For Heaven's Sake
7.Dancing in the Dark
8.Everything Happens to Me

Bill Evans (p)
Gary Peacock (b)
Paul Motian (ds)

1963/12/18

 - ジャズ ,

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