絶妙なヴィブラート! レスター・ヤングの《シュー・シャイン・ボーイ》 - カフェモンマルトル

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ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

絶妙なヴィブラート! レスター・ヤングの《シュー・シャイン・ボーイ》

      2018/09/06

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ベイシー・コンボの《シュー・シャイン・ボーイ》

1936年。

30年代といえばスウィングジャズが全盛の時代だ。

カウント・ベイシー楽団の演奏も、当然、ぴちぴちと勢いにあふれていた

ここで、俎上に載せたいナンバーはベイシーが少人数のコンボで演奏された《シュー・シャイン・ボーイ》だ。

音数少ないピアノが特徴のカウント・ベイシーも、ここでは左手のストライドを駆使してノリノリに弾きまくっている。

ベーシストは、ウォルター・ペイジ。

はじける低音。
80年以上前の録音とは思えないほど、ツヤのあるはじけた低音が踊る。

ジョー・ジョーンズのブラッシュさばきも職人の技。
なんたる安定感と躍動感。

しばらくこの3人によるゴキゲンな戯れが続いた後、おもむろにレスターのテナーがはいる。

軽やかでリズミック。
どこまでも滑らか。

のってきたのか、ジョー・ジョーンズが2回、大きな音でスパッ!とオカズをいれる。

ノンヴィブラート

ここで面白いのは、コールマン・ホーキンスばりにヴィブラートをかけながら吹く箇所が認められること。

一般にレスター・ヤングの吹奏スタイルは、ノンヴィブラートであることが知られている。

このクールなアプローチがレスターをレスターたらしめている要因のひとつで、スタン・ゲッツやアル・コーン、スート・シムズなどどちらかというと白人のテナーサックス奏者に影響を与えている。

テナーではなくアルトサックスでは、ポール・デスモンドやリー・コニッツもレスターのスタイルの影響を受け、若い頃はずいぶんと研究をしたようだ。

楽器は違うが、あのマイルス・デイヴィスのトランペットの演奏スタイルも、少年時代は師匠であるブキャナン先生からの教えを忠実に守り、ノンヴィブラートのスタイルを貫いた。

一般に、ノンヴィブラートの吹奏のほうが、‟オン”ヴィブラート奏法よりも、クールな感触を演奏にもたらす。

いわば、都会的。

逆に、ヴィブラートをかけたほうが情感豊かなサウンドにはなるものの、やり過ぎると、田舎臭さが漂う野暮ったい表現になってしまう。

しかし、カンサスの「田舎」で、大人気を博したカウント・ベイシーの音楽は、洗練された演奏よりも、軽やかで洒落た泥臭さが、大きな持ち味でもあった。

まだ若かりし日のレスターのプレイは、この時代と場が求めるムードを反映してか、あるいは、先輩のテナー奏者、コールマン・ホーキンスの影響が残っていたのか、ほどよくかけられたヴィブラートがベイシーのリズムセクションと絶妙にマッチしており、思わず腰を揺らさずにいられなくなるのだ。

続いて登場するカール・スミスのミュート・トランペットもゴキゲン。

そして、再び登場するレスターのテナーは、以前のソロの時よりも、いっそうヴィブラートがかかっている。

時には古き良きジャズ

100年の間で劇的な進化を遂げたジャズ。それも戦国時代から一気にIT、AIの今日の世まで駆け抜けたかのような、短期間で劇的な進化、発展を遂げてしまったジャズ。

現代のジャズのスピード感に少々肩が凝ったときは、戦前の大らかに揺れるジャズにどっぷりつかるのも悪くはないんじゃないかと。

そういう時にこそ、ほんのりとヴィブラートのかかったレスターのテナーが、心地よく心をマッサージしてくれるのだ。

記:2019/09/04

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