カフェモンマルトル

text:高野雲

*

聖夜にセシルとアート・アンサンブルの「宗教儀式」

      2017/08/15

Pocket

クリスマスイブの夜に、セシル・テイラーとアート・アンサンブル・オブ・シカゴ。

w(゚ロ゚;w

なにもわざわざ、こーゆー日にギンギンにハードなフリージャズを、しかも「フリー」の中でも頂点に位置するような人たちの音楽を聴かんでもいいんじゃない?

……って思う人が大半だと思います。

ところが、ところが。

私がまだ20歳前後だった頃、そういうハードな現場を目撃しちゃたんですね。

いや、自分も一員として参加してたのか……。

かつてあった渋谷のジャズ喫茶「スイング」。

ここはジャズの映像を見せてくれるところだったんだけど、クリスマスの夜に友達とタワーレコードで買い物をした後、「ちょこっと寄って行こうか?」ってことになり、「スイング」のドアを開けたら……。

むむっ、いつもより客が多い。

というより、ほぼ満席。

ギロリとこちらをにらむ目線たちに一瞬怯むものの、店内を見渡すと全員野郎どもではないですか。

しかも、なんだかいつもと雰囲気が違う。

怪しい宗教の儀式みたい。

かかっていた映像は『コルトレーン・レガシー』(だったと思う)。

なんとか空いていた席に座り、ジャズ喫茶初体験のためか心なしか怯えている友人のかわりに、コーヒーを2つ頼んだところで、次にかかったLD(レーザーディスク)は、セシル・テイラーの『ピアノ・インプロビゼーション』。

w(゚ロ゚;w

テイラーのピアノソロのライブ映像です。

雄叫びをあげるテイラー。
ピアノの鍵盤をひっかきまわすテイラー。

これが私のテイラー初体験でした。

なにがなんだかさっぱり分からなかったけど、インパクトは滅茶苦茶ありましたね。

友人はますます怯えています。

さらに、次にかかったのがアート・アンサンブル・オブ・シカゴのライブ。

これもまた、私は初体験。

顔にペインティングをほどこし、ステージ上に所せましと並べられた楽器群をかき鳴らすAEOCのメンバーたち。

なにかの宗教の儀式、あるいは祭典かと思わせるパフォーマンスに度肝を抜かれましたね。

この「スイング」で、流れる映像は、お客からのリクエスト制です。

マスター自らが映像をかけることは滅多にありません。

ということは、コルトレーンやテイラーやAEOCをリクエストしたお客さんがいたということでしょう。

「聖夜」にハードなものばっかりやな~。

しかも、皆腕を組み、真剣な怖い目つきで画面に食い入るように見ている。

彼女いない人たちの怨念と情念をセシルさんや、ロスコー・ミッチェルさんたちが浄化しているかのような風景でした。

この時の私は、まだジャズに入門したばかり。

この日、タワーで買ったCDも、バド・パウエルの『アメイジングvol.5』(クレオパトラがはいっているやつね)だったほどなので、知っているジャズマンの名前も両手で数えられるぐらいのものでした。

そんなウブな私に、テイラーにアート・アンサンブルは強烈過ぎる洗礼ですよ、

もう、ジャズって、やっぱ怖いってば、もう~

そこまでは思いませんでしたが、私に無理やり連れられてきた友人は、顔がひきつっていたから、きっとそう思っていたに違いない(笑)。

しかも、この時の体験がトラウマになっていたのか、彼は私より年上の3浪の予備校生だったんですが、その年の大学受験も、すべて全滅でしたからね……。(; ̄ー ̄A

私のほうはというと、セシル・テイラーも、アート・アンサンブルもキッツ~い体験ではありましたが、妙に惹かれるものがありまして(分からない⇒だから分かりたい!という好奇心)上映中にディスプレイされていたテイラーとアート・アンサンブルのLDをしっかりメモりまして、後日、CDを買って聴いてみました。

すると?

スッと身体の中に彼らの音がはいってきた。

セシルはブルーノートの『コンキスタドール』で、アート・アンサンブルは『アーバン・ブッシュマン』だったと思いますが、なんてピュアで自由なサウンドなんだろうと思ったんですね。

耳からだけの情報のほうが、この場合は良かったのかもしれません。

映像だと、映像のインパクトに気圧されて、肝心な音楽までは耳の中にはいってこなかったんですね。

セシルに関しては、その後もたくさんCDを集めて聴きまくりましたし、だいぶ後になってですが、私がエレキベースだけではなく、ウッドベースにもチャレンジしてみようかな?と思わせたのは、ミンガスでもチェンバースでもなく、じつは、アート・アンサンブルのマラカイ・フェイヴァースのベースが良かったからなんですね。

まだ20歳前後のジャズにウブな青少年だった私にとっては、イブの夜の強烈な体験でしたが、その後、どんなジャズでも、けっこう抵抗なくスイスイと受け入れられる下地のようなものを作ってくれた貴重な体験でもあったのです。

今は「スイング」はなくなり、……そして、そのときイブの夜に大集結していたおっかない顔をしたフリージャズ好きの人たちは、今、どうしてるのかな?

結婚して家庭を持って、今夜はお子さんのためにサンタさんになるのかな?

……なーんてことを思いながら、『アーバン・ブッシュメン』を聴いておりまする。

記:2013/12/24

●関連記事
>>コンキスタドール/セシル・テイラー
>>アーバン・ブッシュメン/アート・アンサンブル・オブ・シカゴ

 - ジャズ ,

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。