カフェモンマルトル

text:高野雲

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ズート・シムズ・イン・パリ/ズート・シムズ

      2017/05/21

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ズート・シムズ・イン・パリZoot Sims In Paris

1961年、渡仏したズート・シムズが、パリの「ブルーノート」で、現地のジャズマンと共演したライブの模様を収録したアルバムが『ズート・シムズ・イン・パリ』だ。

編成はワンホーン。

リズムセクションは、アンリ・ルノーが率いるピアノトリオだ。

アンリ・ルノーといえば、フランスのジャズ評論家としても知られている人だが、なかなかどうして、彼のピアノもなかなか粋だ。

もっとも、本場アメリカのリズムセクションと比較すると「弱い」という指摘があることも否めない。

必要以上にドンドンと連打されるバスドラが気に障る、録音が少々こもり気味なことも手伝い、ベースの音があまり聴こえないなど、たしかに気になる人にとっては気になる要素なのかもしれない。

そして、これらマイナス要因(?)ゆえ、このアルバムの位置づけがいささかズートの一連の作品の中からは隅に追いやられ、「通好みの地味かつ滋味な名盤」という位置づけになっているのかもしれない。

しかし、個人的な感想だが、リズムセクションや録音の悪さは、個人的にはまったく気にならない。

もし、リズムセクションの弱さが気になる場合は、ズートの流れるようなテナーに耳をフォーカスさせてみよう。

朗々と流れるようなテナー、柔らかい歌心、そして暖かみのある音色は、かのレスター・ヤングを彷彿とさせ、彼はレスターの流れをくむテナー奏者だということがよく分かるだろう。

選曲も有名なスタンダード中心なことが嬉しいし、どの演奏も良い。

ライブならではの、ステージ上でのジャズマン同士の会話も聴きとれるトラックもあり、ジャズクラブの雰囲気も味わえる。

くつろぎと、リラックス。

本当にズートのテナーは絹のように滑らかだ。

もちろん、滑らかな語り口の奥には、豊かなスイング感が封じ込められていることは言うまでもない。

一般に、ズートの代表盤としては、ベツレヘムの『ダウン・ホーム』が真っ先に挙げられることが多い。

たしかに、ドラマーのダニー・リッチモンドをはじめとした勢い溢れるリズムセクションが心地よく、彼らに煽られて吹奏を繰り広げるしゃかりきズートも素晴らしい。

しかし、内容的には地味かもしれないが(アルバムとしての存在感も?)、くつろいだ気分で、しなやかに歌うズートいえば、個人的には、まずは『イン・パリ』をオススメしたい。

まさに、ズート・シムズというテナーサックス奏者の持つ特徴、良さが収められているからだ。

粋で心地よい音が、ここにはたっぷりと封じ込められている。

記:2011/05/03 

album data

ZOOT SIMS IN PARIS (United Artists)
- Zoot Sims

1.Zoot's Blues
2.Spring Can Really Hang You Up The Most
3.Once In A While
4.These Foolish Things
5.On The Alamo
6.Too Close For Comfort
7.A Flat Blues
8.You Go To My Head
9.Stompin' At The Savoy

Zoot Sims(ts)
Henri Renaud (p)
Bob Whitlock (b)
Jean-Louis Viale (ds)

1961/12月

 - ジャズ , ,