カフェモンマルトル

text:高野雲

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ラヴ&ヴァイス/サチモス

      2017/05/23

LOVE & VICE (初回限定盤)LOVE & VICE/Sachmos

工場ジャケット

サチモスの『ラブ&ヴァイス』。

このミニアルバムのジャケットは、ネット上の画像をモニターで見ると、なんとなく味気なく感じるかもしれない。

もっとも工場やクレーンなどの建機をウォッチングすることが大好きな私のような人にとってはツボなビジュアルかもしれないが、鮮やかな色彩やアーティストの顔写真が大写しになったCDと並ぶと、これらジャケットデザインの訴求力の強さの中、埋没してしまっていることは否めない。

ところが、実際の商品を手に取ってみると、ジャケットの写真も印刷もなかなかのクオリティ。綺麗かつ美しい。

love_vice

所有しているだけで、なんだか嬉しい気分になり、所有する喜びを味わえる紙ジャケットのパッケージなのだ。



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フェイス

外装の話ばかり書いてしまっているが、もちろん中身の音楽も素晴らしい。
いや、素晴らしすぎる。

何せ、あの名曲《ステイ・チューン》が入っていますからね。

もっとも《ステイ・チューン》がこのミニアルバムの目玉なのかもしれないけれども、残り3曲だって、負けず劣らず素晴らしい。

いやー、ほんとにセンスの良いバンドだわ、サチモスは。

私は2曲目の《フェイス》も大好きだ。

イントロのベースから引き込まれてしまう。

コーラスを深めにかけたベースの音。そして、ハーモニクス。ハーモニクスといえば、ジャコ・パストリアス思い出すが、このハーモニクスは、どちらかと言うとフェイザーをかけたミック・カーンのフレットレスベース・プレイに近いニュアンスを感じる。引きずるように重たいニュアンスもミック・カーン的。

このイントロからベース好き、いや、ミック・カーン好きな私の心をワシづかみ。もっと続いて欲しいと思ってしまう。

リズムはレゲエ的なノリを基調としている。

もっとも、ボブ・マーリーの時代の、緩くてバネのあるレゲエではなく、現代風のタイトに引き締まったレゲエのリズムがものすごくカッコいいのだ。

ヴォーカルのヨンスも、♪よ~よ~よ~と、ボブ・マーリー風に歌う箇所もあるが、これは完全にボブ・マーリーへのオマージュだろう。

キーボードのTAIHEIが効果的に曲の気持良いスペースに落とし込むエレピの音色もセクシーだ。

ボディ

3曲目の《ボディ》もベースのイントロから始まる。

この手のブラックミュージックを意識したリズムは、日本でも70年代から取り入れているミュージシャンは多いので、とりわけ新しいものでは無いが、問題は「何をやるか」ではなくて「誰がやるか」だ。

サチモスがやるとカッコいい。
凡百の日本人ミュージシャンがやると田舎くさい。

洋服と同じだね。
同じ服でも、着る人が違うとカッコ良かったりダサかったりするのと同じ。

サチモスは、かつて何十人ものミュージシャンがカッコ悪く着古してきたリズムをカッコよく着こなしている。

鋭利。ちょっとした「ワルさ」の滲み出たサウンドは滅茶カッコ良い上に、「♪根拠がない・具体性がない・尊厳がない」の歌詞のサビの箇所も気持ちよく盛り上がっている。

ここの箇所や、ちょっとしたところでワザを利かせるYONCEのファルセットのヒネリっぷりもたまらない。カッコ良いです。

S.G.S.2

4曲目の《S.G.S.2》もなかなかのカッコ良さ。

サチモスはヴォーカル、ギター、キーボード、ベース、ドラムス、DJの6人のメンバー各人がそれぞれ卓越した素晴らしいセンスを持っているバンドだが、一人ひとりの演奏の力量のみならず、彼ら6人が融合したときに生まれるサウンドが本当に絶妙でカッコ良いバンドだと思う。

よく、ケミストリーとか化学変化などと言われているけれども、サチモスこそ、まさにバンドならではのケミストリーを感じさせるバンドだ。

この絶妙なバランスで成り立っているサチモスだが、4曲目の《S.G.S.2》に関しては、ギターのTAIKINGがフィーチャーされた作品となっている。

いやぁ、巧い!
というか、センス良い!
ゆえに無茶苦茶気持ち良か!

洋楽マニアに、この曲を日本人アーティストの演奏だよと告げずに聴かせたら、海外のアーティストの作品だと勘違いされるのではないだろうか。

それぐらい、リズム感といい、センスといい、音の空間の構築といい、日本人離れをした卓越したセンスを感じるのだ。

カッコ良い自分を錯覚できる

以上4曲、どれもがすべて素晴らしいサチモスの『ラヴ&ヴァイス』。

これを聴くと、ダサイ自分が、ほんの1センチ程度ではあるが、ちょっとだけカッコよくなった気分に錯覚させてくれる。

昔、ヤクザ映画を見終わった客が映画館の前を肩で風を切って歩いていたというが、きっとそれと同じような気分になれるのだろう。

現代のニッポン男子必聴のミニアルバムだ。

記:2016/11/28

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