カフェモンマルトル

text:高野雲

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ナンシー・ウィルソン・アンド・キャノンボール・アダレイ/ナンシー・ウィルソン&キャノンボール・アダレイ

   

ナンシー・ウィルソン&キャノンボール・アダレイNancy Wilson & Cannonball Adderley

ナンシーとナット

出だしの《セイヴ・ユア・ラヴ・フォー・ミー》から、一気に引き込まれてしまう。

ノリの良いナンバーを配さずに、むしろシットリと聴かせるスローナンバーでリスナーの耳を鷲づかみにしてしまうあたり、ナンシー・ウィルソンの歌唱力と、キャノンボール・アダレイ・クインテットのたしかな実力を見せつけられる思いだ。

ナンシーのヴォーカルに、最初はナット・アダレイのコルネットがロング・トーンを中心に軽く吹き添える。

あくまで、ナンシーの歌を引き立てる裏方役に徹している。

ナンシーとキャノンボール

それとは相反するかのように《ネヴァー・ウィル・アイ・マリー》では、キャノンボールがナンシーの歌にからむ。

弟のナットとは好対照。

積極的にナンシーのヴォーカルにからんでいく。

あたかも彼の吹くアルトの音色はもう一人の歌手のようだ。

素晴らしいマッチング、そしてコンビネーションだ。

メンバーそれぞれの個性が良い具合にブレンドされ、決してぶつかりあうこともなく、曲ごとに様々な表情をみせながら片時も耳を離せない状態が、心地よく続く。

そしてこのまま、気が突けば、最後まで一気に聴き通している自分に気付く。

『ナンシー・ウィルソン・アンド・キャノンボール・アダレイ』は、そんなアルバムだ。

キャノンボール・アダレイ・クインテット

このアルバムは、ナンシー・ウイルソンが表記の頭になってはいるが、キャノンボール・アダレイ・クインテットののみの演奏もある。

もちろんナンシーとの共演も素晴らしいが、ナンシーが抜けたクインテットのみの演奏もなかなかに充実。

安定したリズムに、充実したアレンジなのだ。

私は、キャノンボール・アダレイ・クインテットは、燃費がよく加速性に優れた軽自動車のようなものだと思っている。

どの演奏においてもアンサンブルのまとまりが良く、なおかつ安心して聴ける安心感がある。

仮にマイルス・デイヴィスやアート・ブレイキーのグループを大型車だとすると、大型車特有のスケールの大きさはキャノンボール率いるクインテットには感じられないかもしれない。

しかし、その反面、時として感じられる大型車ゆえの燃費の悪さやラフな豪快さもないので、まとまりのよい安定感を常に感じることが出来る。

あくまで軽快に、どのような曲もサラリと小回りを活かして演奏してしまい、大きく道を踏みはずすことがまったくない。

もちろん、小さくまとまっているだけではなく、どの演奏にも抜群の躍動感が感じられ、これこそベースのサム・ジョーンズと、ドラムスのルイス・ヘイズの職人芸の賜物だろう。

フェイクまがいの目立ったプレイはいっさいしていないのに、常にグルーヴ感を失わない、このような安定感のあるリズムセクションは、全ベーシストとドラマーの鑑といっても過言ではないだろう。

個人的には、《ユニット7》がおすすめ。

入門者にも安心して薦められる内容だと思う。

album data

Nancy Wilson And Cannonball Adderley (Capitol)
- Nancy Wilson & Cannonball Adderley

1. Save Your Love For Me
2. Never Will I Marry
3. The Old Country
4. Happy Talk
5. (I'm Afraid) The Masquerade Is Over
6. A Sleepin' Bee
7. Little Unhappy Boy
8. Teaneck
9. I Can't Get Started
10. One Man's Dream
11. Never Say Yes
12. Unit 7

Nancy Wilson (vo)
Cannonball Adderley (as)
Nat Adderley (cor)
Joe Zawinul (p)
Sam Jones (b)
Louis Hayes (ds)

1961/06/27,29
1961/08/23,24

記:2015/08/21

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