カフェモンマルトル

text:高野雲

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オーネットロジー/ラルフ・ピーターソン

      2015/08/29

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オーネット・コールマンが書いた曲の魅力は、一つに素っ頓狂さ。

二つに、子供っぽい無邪気な旋律の一筆書きっぽさ。

メロディの一瞬一瞬に光り輝く瞬間はいくつもあるが、では、その“光”に至るまでの音楽的な起承転結や、旋律のストーリー性はあるのかというと、じつは、ないことのほうが多い。

しかし、そこが彼の書いた曲の魅力でもあり、特徴付けている要素の一つなのだ。

上記のことは、以前にも何度か、書いたことだが、もう一つオーネットらしさのポイントを忘れていた。

ヌメッぽさ。

なんだかヌルヌルとした感じ。

この要素も忘れちゃいけないと思い出させてくれたのが、ラルフ・ピーターソンの『オーネットロジー』だ。

疾走するドン・バイロンのクラリネットの音色の功績もたしかに大きいが、とにかくこのアルバムのタイトル曲《オーネットロジー》は、オーネットの曲でもないにも関わらず、尋常ならざる“オーネット臭”を感じる。

それはなぜか。

ラルフ・ピーターソンはオーネットの曲特有の“ヌメッぽさ”を感じ取り、それを彼なりの方法で再現しているからなのだと思う。

《オーネットロジー》を筆頭に、このアルバムから感じる肌触りはどこまでもオーネット的だ。

彼の曲は一曲しか演奏していないにも関わらず、だ。

フォーマットを見てみよう。

(バス)クラリネット、ヴィブラフォン、ベース、ドラム。

ラッパは抜けているが、この編成で思い出すのが、エリック・ドルフィーの『アウト・トゥ・ランチ』だ。

構築的でクールな音空間と、ヴァイブの冷たい色気、人肌の温もりを感じさせつつも、強烈なトグロを巻く(バス)クラリネット。

しかし、音の触感は限りなく『アウト・トゥ・ランチ』的にもかかわらず、漂う雰囲気は、徹底的に“非ドルフィー的”なところが面白いし、興味深い。

あくまで彼の場合の楽器セレクションは、オーネット的な“ヌメッぽさ”を追求した末の一つの結論なのだろう。そして、図らずともドルフィーの名盤の編成に似てしまったというのが、本当のところなのではないだろうか。

もちろん、ブラシを多様したピーターソンのシャープな疾走感溢れるドラミングも、とても格好良いのだが、このアルバムの場合は、各人のプレイがどうというよりも、ラルフ・ピーターソンのサウンド・メイキングのセンスと、“ヌメリ”の効いたサウンド空間がとても気持ちよいアルバムといえる。

記:2004/01/31

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