ピープル・タイム/スタン・ゲッツ

      2021/01/22

大充実のラストアルバム

スタン・ゲッツは、1991年6月6日にこの世を去った。

ガンの宣告を受けた後も、演奏活動を止めなかった彼。

病魔と闘いながらも、最後まで演奏活動を続けた。

そんなスゲッツの最後の録音が、『ピープル・タイム』だ。

コペンハーゲンのライブハウス「カフェ・モンマルトル」で行われたライブ。

ピアノのケニー・バロンとのデュオによる演奏だ。

このライブ演奏、一言で言ってしまうと、平凡ながら、とても素晴らしい内容だ。

炭火の炎のように、じわじわと熱くゲッツの最後の燃焼を聴くことが出来る。

そして、“ラスト・レコーディング”という先入観も手伝ってだが、涙なしには聴けない内容ともいえる。

じんわりと暖かく、流麗で男らしく、ニュアンスに富んだゲッツのプレイ。
彼は、最後の最後まで、男一匹ジャズマンだったんだよなと実感させてくれる内容だ。

ケニー・バロンのピアノも素晴らしい。

単なる伴奏役に甘んじることなく、かといって主役を食うほどの自己主張をするほどでもなく、ストライド奏法から、モダンな和声を多用したバッキングまで、引き出しの多さにも驚かされるが、きちんと演奏に適したプレイをその場その場で選択しているので、まったくイヤ味に感じない。

緩急とメリハリの効いた非常にバランスの良いプレイだ。

デュオにおける、理想的なピアノの演奏例と言えるだろう。

大充実。
何度聴いても飽きない。

記:2004/01/26

album data

PEOPLE TIME (Emarcy)
- Stan Getz

disk 1
1.East Of The Sun (And West Of The Moon)
2.Night And Day
3.I'm Okay
4.Like Someone In Love
5.Stablemates
6.I Remember Clifford
7.Gone With The Wind

disk 2
1.First Song (for Ruth)
2.(There is ) No Greater Love
3.The Surry With The Fringe On Top
4.People Time
5.Softly, As In A Morning Sunrise
6.Hush-A-Bye
7.Soul Eyes

Stan Getz (ts)
Kenny Barron (p)

1991/03/3,4,5&6
at the Cafe Montmartre,Copenhagen.

 - ジャズ