カフェモンマルトル

text:高野雲

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マイナー考

      2015/05/24

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日本人はマイナー・キーの音楽が好きだとよく言われる。

「だんご3兄弟」をはじめ、演歌・歌謡曲・アニメの主題歌など、我々が普段耳にする音楽のほとんどがマイナー調だといってもよいだろう。

かの小林秀雄も「モーツアルト」ではGマイナーの交響曲に熱をあげているが、モーツアルトが生涯に作った41の交響曲のうちマイナー・キーの曲は僅か2曲しかない。重要な残り39曲に目をつぶってまでも、小林秀雄はマイナー曲に入れ込んでいるのだ。

日本のジャズ学校で、ごくごく初期に教えられるスタンダードの入門曲はマイナー曲の「枯葉」が多いし、ヒットチャートの上位を占める曲もマイナー調が多い。

もちろんメジャー調の曲のヒット曲もあるにはあるが、どこかしら「メジャーであることの確信犯的な言い訳」が歌詞なりアレンジなりにチラチラと散見される。

だから、日本人は度し難くマイナー好きなのだ。

と、言うのは簡単だし、ワケ知り顔の人たちの常套句でもある。

普段音楽に関心を持っていない人が上の実例を持ち出されれば、「なるほど、言われてみればその通りだ」と思うかもしれない。

しかし、ヒネクレ者の私は、ほんとにそーかなーと思ってみたりもする。

勇壮であるはずの軍歌もマイナーじゃあないか、って言う人もいるが、「軍艦マーチ」「さらばラバウル」「加藤隼戦闘隊」のようにポピュラーな軍歌ってメジャーだぜ。「加藤隼戦闘隊」は途中でマイナーに転調するけどね。

各地に伝わる民謡だって、マイナー調もあればメジャー調も多いよ。「ソーラン節」がマイナーか?

向こうでもヒットした坂本九の「上を向いて歩こう」だってメジャーだし、演歌に関してはイメージでマイナーな曲が多いって先入観だけが働いているんじゃないの?

メジャーでノーテンキな曲も多いよ。「浪速節だよ人生は」なんかもメジャーだね。

アニメのオープニングの曲だってよく考えてみれば、行け行け調の歌はメジャーだし、そうそう、ウルトラマンを例に取っても「マン」も「セブン」も「帰マン」もメジャーじゃん。「エース」あたりからは変化してきて、「エース」はマイナー、「タロウ」はマイナーからメジャーに転調する。

「鉄腕アトム」だって「鉄人28号」だって「ガンダム」だってメジャーじゃない。

一体全体どうして「日本人=マイナー好き」という説が一般的になったのか俺には良く分からない。

ところで、メジャーだから「悲しい」、マイナーだから「陽気」だ。そんな単純な二分法で人間の感情を分けられたらたまったもんじゃないよね。

たとえば黒人の葬式は、「聖者の行進」のようにメジャーな曲をにぎやかにやるじゃないですか。

メジャーであること、マイナーであること、っていうのはいわば送り手側のテクニカルな問題で、受け手側にとっては、あまり関係の無いことなのでは?と思うんですが如何でしょ?

「マイナー」か「メジャー」かを知ることによって、受け手側が感受性を予めチューニングしてしまって、自ずから「悲しまなきゃいけない」みたいな妙な受け入れ体勢を整えてしまうという妙な現象が起きてしまうんじゃないだろうか?

やはり、耳に入ってくる音は、まずは、そっくりそのまま受け止めるように心がけたいものだ。

難しいんだけど……。

記:1999/04/09

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