リーチ・アウト/ハンク・モブレイ

   

SANYO DIGITAL CAMERA

メロディアスな2人

モブレイとベンソン。

一見、意外な組み合わせに感じるかもしれないが、相性はなかなか。

両者ともハートフルなメロディメーカーだからだ。

メロディアスに歌うギターを奏でるジョージ・ベンソン。

控えめで派手さはないが、まろやかでグッとくるフレーズを繰り出す達人、ハンク・モブレイ。

アルバム冒頭を飾る曲は、なんと当時のモータウンの人気グループ、フォートップスのナンバー、《リーチ・アウト・アイル・ビー・ゼア》。

この親しみやすいメロディを持つ曲は、モブレイ、ベンソンともに独自のソウル・フィーリングを発揮するには最適のナンバーといえるだろう。

ギターを立てるアレンジ

曲が始まると、しばらくの間はベンソンのギターの独演場と化し、一瞬、このアルバムのリーダーはテナーサックス奏者だということを忘れてしまうほどだが、これはアレンジの妙だろう。

ギターだからこそ、あのメロディが映える。

モブレイのまろやかなテナーサックスが、あのメロディを奏でたら、いささか野暮ったさのほうが先だった内容になっていたかもしれない。

そのへんの引き際の良さがモブレイらしい。

リーダーでありながらも、自己主張を考えるよりも、あくまで良い音楽を作ることを優先させる発想。

結果的に、とてもリラックスした心地良いアルバムが生まれた。

キリリと引き締めウディ・ショウ

もっとも、単に心地よいBGMで終わらせないところがブルーノートらしい。

特にウディ・ショウの溌剌とした鋭いなトランペットが、演奏を緩ませすぎずにキリリと引き締めている。

シャープなトランペットに、マシュマロのようなモブレイのテナー、そしてマイルドなベンソンのギター。
音色の組み合わせも、これまた絶妙なのだ。

ジャズ半分、ソウル半分。

《リーチ・アウト・アイル・ビー・ゼア》は、これらのオイシイ要素が絶妙に混ざり合った極上のアルバムといえるだろう。

もっとも、ストレート・アヘッドな4ビートジャズ至上主義のファンはそっぽを向く内容かもしれないが……。

しかしまた、適度の緩さも、これもまたジャズ、いやソウルやR&Bなど黒人音楽ならではのエッセンス。

このまろやかな緩さ加減は、ソウル好きにもたまらないはずだ。

2曲目も良い

それでも、やっぱりソウルはちょっとねぇ……。

もっとストレートアヘッドなジャズを聴きたいという御仁は、1曲目は飛ばして、2曲目の《アップ、オーヴァー、アンド・アウト》を聴いてみよう。

一瞬、グラント・グリーンの『アイドル・モーメンツ』の2曲目、《ジャン・ド・フルール》を聴いているような気分に陥るのでは?

モードイディオムが導入されたストレート・アヘッドなカッコ良い演奏なのではないかと。

こういう隠れ名演奏もあるので、1曲目だけで判断をしてしまうのは勿体無い。

ところで、ぜんぜん関係ないが、ジャケット左のエッフェル塔の下を横切る帽子をかぶった紳士が気になる(笑)。

「やらせ」でなければ、じつに絶妙な場所に位置し、じつに絶妙なタイミングでシャッターが切られたものだと思う。

記:2009/08/06

album data

REACH OUT! (Blue Note)
- Hank Mobley

1.Reach Out (I'll Be There)
2.Up, Over, And Out
3.Lookin' East
4.Goin' Out of My Head
5.Good Pickin's
6.Beverly

Hank Mobley (ts)
Woody Shaw (tp)
George Benson (g)
LaMont Johnson (p)
Bob Cranshaw (b)
Billy Higgins (ds)

1968/01/19

動画もどうぞ

『リーチ・アウト』について、動画でも語っていますので、ご興味のある方はどうぞ!

 - ジャズ