ジャズに入門するならマイルスの『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』から

   

ジャズ入門 なにか1枚

マイルスを何か1枚。
いや、ジャズってぇもんを何か1枚勧めてよ、と言われたら、「本当は1枚だけじゃ無理なんだけどなぁ」と思いながらも、これを推したい。

ラウンド・アバウト・ミッドナイト+4
'Round About Midnight

ハードボイルド、リラックス、リズム、哀愁、粋……。

ジャズならではのおいしいエッセンスが凝縮されているからだ。

夜のしじまに響き渡るかのような、鋭いマイルスのミュートと、映画のクライマックスを彩るかのようなコルトレーンの咆哮。
この鮮やかな対比が見事の《ラウンド・ミッドナイト》。

当時のマイルスが擁したジャズにおける最強リズムセクションの面目躍如といえる《アー・リュー・チャ》。

イントロのレッド・ガーランドのピアノだけで泣けるのに、さらにもっと泣けよ、泣けよと優しく誘うイジワルなマイルスのミュートが憎い《バイ・バイ・ブラックバード》。

スウェーデンの民謡をここまで高貴に、力強く昇華させてしまった《ディア・オールド・ストックホルム》。

グループとしての一貫したコンセプトを打ち出し、各々のメンバーの特質を余すことなく引き出したマイルスのリーダーとしての力量、トランペッターとしての実力を見せつける名盤なのだ。

このアルバムにおいてマイルスの描き出した“世界”に抵抗や違和感を感じるようだったら、もともとあなたはジャズに縁が無いのか、まだまだ若過ぎるか、のどちらかでしょう。

ちょっと演出過剰チックなところも無きにしも非ずですが、最初はこれぐらいドラマティックなジャズから「おお、ジャズってええなぁ~」と興味を持っていただき、色々と聴いた末、最終的にはチャーリー・パーカーの素晴らしい閃きと演奏技術と構成美に目覚めてほしいものであります。

記:1999/05/18

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