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ジャズと映画と本の日々:高野雲

S-F-X/細野晴臣

      2018/01/02

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S-F-X

1曲目から最後まで順番どおりに聴く

やっぱり《第三の選択》が、このアルバムの中では、なんだかんだいって一番良い。
次いで、ラストの《ダークサイド・オブ・ザ・スター》かな。

もちろん、この2曲に夢中になれるのは、《ボディ・スナッチャーズ》⇒《アンドロジーナ》⇒《SFX》⇒《ストレンジ・ラヴ》という曲を連続して聴くことによって形作られた気分の下地があったからこそなのだが。

この順番で聴き進めていき(発売当時はレコードだったので、A面が終わったら盤面をひっくり返してB面を再生し)、心と身体の緊張感を盛り上げてゆき、ドドメとして、さらに緊迫感のある《第三の選択》をワクワクしながら鑑賞。そして、最後にゆったりと《星の暗黒面》で癒される。

この真っ当で正しい曲順で聴いていくと、細野さんが形成したこのアルバムの流れに正しく乗ることが出来るのだ。



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YMO散開後のアルバム

痙攣するような打ち込みリズム。
当時、細野さんは雑誌のインタビューで、「32ビート」と言っていたが、それだけ1小節を細かに細分化し、さらに細分化のみならず、《ストレンジ・ラヴ》では効果的なストップを用いたりして、脳細胞に心地の良い緊張状態を作り出す楽曲が続く。

YMO散開後は『ビデオゲームミュージック』や『スーパーゼビウス』、そして『ノンスタンダード・ミュージック』などのミニアルバムを立て続けに発表し、これらの出来は、もちろん悪い出来ではなかったんだけど、なんだか細野さんのやりたいことがよく分からないな~、なんて思っていたところに究極痙攣デジタル音楽の決定盤が登場したという感じだった。

こういっちゃ悪いけど、多少の迷走を繰り返して結実したのが、きっと『S-F-X』だったのだなと思ったものだ。

打ち込みの中にも細野グルーヴ健在

しかし、「痙攣デジタルミュージック」とはいっても、たしかに聴き手を緊張状態へと誘う要素はあるにはあるが、細野さんのヴォーカルは、どこかユーモラスでほんわかしたムードが漂っており、ベースもシンセベースの打ち込みながらも、短めの音価とモッコリしたノリは、まさに弦ベースを生で弾いている細野さんのグルーヴそのもの(ただし3曲目のタイトル曲のベースは西村麻聡)。

よって、単なる打ち込みリズムに緊張感を強いられるだけではなく、細野さんが持つ身体感覚もきちんとこちらに伝わってくる内容なのだ。

そこが、あくまで硬質な感触をどこかにたたえている教授(坂本龍一)の音楽とは決定的に異なるところで、それは彼らの背景となる音楽がまったく違うことに起因しているのだろう。

言うまでもなく教授の場合はクラシックや現代音楽、細野さんの場合、ルーツとなる音楽はソウルやR&B、アメリカンポップス。

アメリカの黒人音楽が持つ特有の柔らかさや、アメリカンポップスが持つキャッチーさが細野さんの底流に流れているのだろう、どんなに硬派なナンバーを作っても、どこかホッコリとした柔らかさがあるのだ。

それが、当時としてはかなりハイパーな打ち込みミュージックだった『S-F-X』にもきちんと反映されているからこそ、今でも時折思い出すたびに、このアルバムに手が伸びてしまうのだろう。

album data

S-F-X (Teichiku Non-Standard)
- 細野晴臣

1. Body Snatchers
2. Androgena
3. SFX
4. Strange Love
5. Alternative 3
6. Dark Side Of Stars~地球の夜にむけての夜想曲~

 - 音楽

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