サムシング・クール/ジューン・クリスティ

   

ジューン・クリスティの魅力

ようやく、この年になってジューン・クリスティが分かってきた。

「分かる」と書くと、お前に何が分かる?と突っ込まれそうだが、要するに、彼女の表現の本質的な素晴らしさに、遅ればせながらようやく気付いたということであります。

このアルバムのタイトルにも「クール」という言葉があるとおり、彼女の歌唱は、本当にクールだ。

人生や恋愛に対して、どろどろに没入することは決してなく、どこか冷めた目線で客観的に捉えているかのような歌唱。

だから、少々あっさり気味に聴こえるのは、そのためなのだろう。

この「あっさり」とした感じが、「素っ気なさ」と受け止めてしまいがちなところで、情感を込めて唄うアクの強いシンガーと比べると、歌手としてのセールスポイントが、一度や二度の鑑賞では、なかなか捉えづらいことは確か。

しかし、ジューン・クリスティは、決して淡々と歌っているわけではなく、必要以上のオーバーな表現を表に出すことを潔しとしないのだろう。

だからこそ、この彼女の「美学」(あるいは「持ち味」)に気がつけば、あっさり目の歌唱の中にも、こちらの想像力を書きたてる行間が潜んでいるということに気がつく。

ジューン・クリスティの歌声

参加メンバーをみれば、なんとも豪華な面子たちによるレコーディング(もちろん、一同に会して演奏したわけではなく、1953年から60年の間の4回にわたっての録音)の『サムシング・クール』。

オケに耳を澄ますだけでも、破格のクオリティのアンサンブルを楽しめる。

そして、ジューン・クリスティの歌声。

決して主張が強いヴォーカルではないのだけれども、バックの贅沢なオケと絶妙なマッチングを見せている。

同じ白人女性歌手でスタン・ケントン楽団出身のクリス・コナーやアニタ・オデイほどの強烈なアクはないけれど、また、日本でもっとも有名な白人女性歌手の一人、ヘレン・メリルほどホットではないけれども、彼女たちのように、わかりやすい形で表出する個性に頼らずとも、しっかりとした抜群の存在感をほこる不思議なたたずまいの声が、そこにはある。

記:2015/08/29

album data

SOMETHING COOL (Capitol)
- June Christy

1. Something Cool
2. It Could Happen To You
3. Lonely House
4. This Time The Dreams On Me
5. The Night We Called It A Day
6. Midnight Sun
7. I'll Take Romance
8. A Stranger Called The Blues
9. I Should Care
10. Softly As In A Morning Sunrise
11. I'm Thrilled
12. Something Cool
13. It Could Happen To You
14. Lonely House
15. This Time The Dream's On Me
16. The Night We Called It A Day
17. Midnight Sun
18. I'll Take Romance
19. A Stranger Called The Blues
20. I Should Care
21. Softly As In A Morning Sunrise
22. I'm Thrilled

June Christy (vo)
Pete Rugolo (arr,cond)
Frank Beach,Conte Candoli,Maynard Ferguson,Conrad Gozzo,Ray Linn,Ollie Mitchell,Uan Rasey,Shorty Rogers,Ray Triscari,Claude Williamson,Jimmy Zito (tp)
Harry Betts,Nick Dimaio,Herbie Harper,Tommy Pederson,Dick Reynolds,Frank Rosolino (tb)
Dick Noel,George Roberts (bass tb)
Vincent DeRosa,John Graas (flh)
Harry Klee,Bud Shank (fl,alto flute,as)
Bob Cooper,Ted Nash (fl,ts)
Phil Stephens (tuba)
Skeets Herfurt,Willie Schwartz (as)
Fred Falensby,Jimmy Giuffre (ts)
Bob Gordon,John Rotella (bs)
Buddy Collette,Paul Horn (reeds)
Barney Kessel,Jack Marshall,Tony Rizzi (g)
Joe Castro,Geoff Clarkson,Russ Freeman,Paul Smith (p)
Harry Babasin,Joe Mondragon (b)
Shelly Manne,Alvin Stoller (ds)

1953,1954,1955,1960年

 - ジャズ