カフェモンマルトル

text:高野雲

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スウィンギング・サウンズ/シェリー・マン

      2015/06/09

スウィンギング・サウンズSwinging Sounds

いつもシェリー・マンのドラミングを聴くたびに、精巧につくられたスプリング仕掛けの機械を連想する。

もちろん、機械のように正確という意味ではない。

曲のムード、トーンにあわせて巧みに、ギアチェンジをし、軽やかな弾みから、へヴィな揺れまで、自在に、正確に、叩き出す腰のスプリングの効き具合が、まるで強靭でで正確なバネのようだと感じるのだ。

彼のリーダー作の多くは、最初はホーン陣やピアノに耳を奪われ、ドラムに意識が回るのは一番最後だったりすることも多い。

しかし、それは、それだけシェリー・マンの演奏の組み立てが卓越な証拠でもある。

一聴、無愛想なバッキングに感じるかもしれないが、じつは、その逆で、細かいところまで、とてもよく曲のキモを把握して叩いていることに他ならない。

このアルバムのフォーマットは2管編成だが、彼の立体的なドラミングは完璧に近いカタチで生き、サイドマンをあますことなく、引き立てている。

だからこそ、最初はチャーリー・マリアーノのサックスに最初は耳を奪われてしまうかもしれないが、それはそれでマンのもくろみ通りなのだろう。

しかし、5回、6回と聞き返すうちに、次第に、意識せずとも、職人的なシェリーマンのスティック(ブラシ)捌きが浮かびあがってくることだろう。

直線的なグルーヴだが、リズムフィギュアの骨格は太く、しかも強靭にサイドマンをプッシュしていることがわかる。

彼のドラミングは、たとえばアート・ブレイキーやエルヴィン・ジョーンズのような爆発力はないが、そのぶん爆発に費やすエネルギーを、バッキングにおける強靭な“腰”のほうに注力しているように感じられる。

充実したアンサンブルの続くアルバムではあるが、テーマのメロディが歯抜け的なマヌケさをちょこっと感じさせるバド・パウエルの名曲《ウン・ポコ・ローコ》を微笑ましく感じる。

パウエル本人の凄みのあふれた演奏とはうってかわって、こちらの演奏は、とってもスポーティ。ウエストコースト的爽やかさが云々を言う以前に、原典となるパウエルの演奏があまりにも妖気じみている、といったほうが正解なのかもしれない。

それほど、見事にカラーが塗り替えられてしまっているのだ。

album data

SWINGING SOUNDS SHELLY MANNE & HIS MEN,VOL.4 (Contemporary)
- Shelly Manne

1.The Dart Game
2.Bea's Flat
3.Pathenia
4.Un Poco Loco
5.Bernie's Tune
6.Doxy
7.Slan
8.A Gem from Tiffany

Shelly Manne (ds)
Stu Williamson (tp)
Charlie Mariano (as)
Russ Freeman (p)
Leroy Vinegar (b)

1956/01/19,26 2/2

記:2009/03/30

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