演奏前の期待感と、演奏スタート後の感動/アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー

   

syoukasen

ジョン・コルトレーンの《アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー》といえば、なんといっても、63年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルでのライブ演奏でしょう。

ラストのカデンツァが長くて感動的な演奏で有名ですね。

これは、『セルフレスネス・フィーチャリング・マイ・フェイヴァリット・シングス』で、さんざん聴いてきているつもりなんだけれども、

『マイ・フェイヴァリット・シングズ:コルトレーン・アット・ニューポート』のライブの順番通りに収録されているアルバムを聴くと、またまた新たな感動が押し寄せてくる。

つまり、『セルフレスネス』のほうでは、いきなり始まる演奏が、こちらのニューポートヴァージョンは、演奏がはじまる前のメンバーのちょっとした音出しと、司会者によるメンバー紹介も収録されているんですね。

このざわざわ感、何かが始まるぞ!な期待感、そして、はじまった! 《アイ・ウォント・トーク・アバウト・ユー》!

なるほど、この曲はしょっぱなに演奏していたのね。

演奏前のちょっとしたMCや音出しが入っているだけで、聴きなれたはずの演奏も、「いよいよ満を持しての登場」感が増幅され、ぞわぞわぞわ~っと感動が襲ってくる。

そして、2曲目が、おなじみの《マイ・フェイヴァリット・シングズ》!

数あるコルトレーンの演奏の中でも最高傑作の呼び声の高い演奏だ。

この演奏、《アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー》が終わると、間髪をいれずにすぐに始まる。

たいして間をおかずに一気に演奏を開始しているとは、知らなかった。

さらに《マイ・フェイヴァリット・シングズ》が終了すると、ほとんど息をつく隙もなく、《インプレッションズ》が始まる。
これも、ライブの順番どおりの編集でこそ味わえる醍醐味。

とにかく、1963年の七夕の日のジョン・コルトレーンは、意欲満々で演奏に臨んでいたのだなぁということがわかる。

長いカデンツァをエネルギッシュに吹き終えた後、間髪をいれずに、《マイ・フェイヴァリット・シングズ》のイントロを吹いたかとおもうと、わずかな時間でソプラノ・サックスに持ち替え、元気なブロウを展開する。

『セルフレスネス』をお持ちの方がいたら、内容が一緒だから買わないでもいいや、などと思うなかれ。

曲の並ぶ順番が変わるだけでも、曲と曲の間を体感するだけでも、全然聴こえ方が違うから。

たったこれだけのことで、これほどまでに感動のボルテージがアップするのかと思うほど、このCD、いいですよ。

さらに音も格段によくなっているし。

ちょっと、信じられないくらい素晴らしいコルトレーンをこのCDで体験しよう。

過激さと、音楽の完成度のバランスがちょうどイイ按配でとれている時期のコルトレーン。これぞ、コルトレーンという熱血巨人を知るにはもってこいの入門盤にして、コルトレーンマニアにとっては永遠の座右の盤なのだ。

記:2008/01/30

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