ティップトウ・タップダンス/ハンク・ジョーンズ

      2021/02/18

シンプル、上質

ハンク・ジョーンズの味わい深いピアノソロアルバムだ。

彼は伴奏に回ったときも、端正で上品なバッキングを持ち味とするピアニストだが、彼のピアノソロのパートに耳を澄ますと、時折ハッとするようなフレーズに気がつくことも少なくない。

その点は、タイプはちょっと違うが、トミー・フラナガンと似ていなくもない。両者ともに、とても趣味の良いピアニストだと思う。

トニー・ウィリアムスやロン・カーターと組んだ“グレート・ジャズ・トリオ”では、結構ガンガンとアグレッシヴなピアノも弾くには弾くが、彼のピアノの本質は控えめで上品なのところにあると感じる。

彼の上品な味わいに気がつくと、今まで気がつかなかった(気がつきにくかった)魅力が一気に聴こえてくるようになる。

たとえば、彼のピアノだけを聴いてみるのはどうだろう?

『ティップトウ・タップダンス』なんか、ハンク・ジョーンズのピアノをじっくりと味わうにはうってつけのアルバムだ。

彼は、多くを語らない。

難しい言葉やレトリックも一切使わない。

しみじみとした語らいが淡々と続くだけだが、なぜか、じわりと染みてくる。

決して雄弁ではないし、大袈裟なことは何一つ言わないが、語りの一言一言が、いつのまにか心の襞まですーっと染みとおってくるのだ。

年季の入ったバーテンのさり気ない一言が、ずしりと、確実にこちらの心の奥までに響くような、そんなピアノを味わえる。

心地よさを持続させながら、そして、控えめながらも洒落た雰囲気と語らいを崩すことなく、いつのまにか聴き手を虜にしている。

まさに、ベテランならではの技だと思う。

記:2003/12/03

album data

TIPTOE TAPDANCE (Galaxy)
- Hank Jones

1.I Didn't Know What Time It Was
2.Emily
3.Sweet Lorraine
4.Two Sleepy People
5.I'll Be Around
6.It's Me Oh Lord
7.Love Divine,All Loves Surpassing
8.Memories Of You
9.Lord,I Want To Be A Christian

Hank Jones (p)

1977/06/29
1978/01/21

 - ジャズ