オーバードライヴ/試写レポート

      2019/08/29

benia

B級テイストだが、三味線の音色は良い

先日、一緒に『風音』を観にいった脚本家が、東陽一監督は女性(この映画では、つみきみほ)を撮るのがウマイと言っていた。

そのニュアンス、分かるような気がするが、同時によく分からなくもある。

そのウマイ・ヘタって、具体的にはどういう違いなの?と聴いたオレ。

うーん、なんていうんだろう、そうそう、女性を撮るのがヘタな人の作品を観れば分かりますよ、と脚本家。

なるほど。

バド・パウエルのピアノの凄さは、クロード・ウイリアムソンのようなパウエル派の凡百のピアニストを聴けば聴くほど、より一層分かるのと同じことか。

そして、先日、その脚本家の言っていることがなんとなく分かったような気がした。

『オーバードライヴ』を観たのだ。

おーい、もっと杏さゆりを可愛く撮れよー。

べつに、オレは杏さゆりのことは好きでも嫌いでもないが、あそこまで杏さゆりをを非魅力的に描くことはないだろう。

青森の三味線の師匠の孫娘。田舎の女の子ということで、わざとズベラダサく演出しているのかもしれないが、パンフレットには“とびきりカワユイ女の子”と書いてある。主人公はこの可愛い女の子にメロメロになったがために東京に帰らずに青森にとどまり三味線の修行に打ち込むストーリーとなっているのだ。

だから、演出的には魅力的で可愛い子に描かれていないといけないはずなのに、しかし、主人公を青森にとどまらせるほど魅力的には描かれてません。

なるほど、なんだか東陽一監督が女性を撮るのが、とてつもなく上手く感じられてきたぞぉ。

ちなみに先述した脚本家は、杏さゆりフェチで、英語以外の目的でNHKの英会話を見ているほどだが、彼が観たら、怒るだろうなぁ。

しかし、あれだな。
久々にすっげぇB級観ちゃったなって感じ。

テイストがB級な映画ならいくらでもあるし、私も、むしろそのようなB級でオマヌケで大味なものが好きだ。面白ければ、テイストはAだろうがBだろうが、関係のないことなのだ。

しかし、つまんないB級というのは、こういうことを言うのか、と思ってしまった次第。

CGの使いかたも、時折挿入されるアニメも、物語のナビ役で時々ヘタクソな和風ラップを歌う女の子の演出も、なーんか、お寒い。

しかも、三味線に勝ポイントは、ブルース・リーの“Don't think. Feel"かよぉ。

出典は明かされてないから、分かる人はニヤリだろうけど、知らない人は、杏さゆりのキンキン声で何言ってるのか分からないんじゃないんだろうか?

三味線のバトルという目のつけどころは面白いと思う。

「へぇ、三味線でこんなことも出来るんだ」という驚きと、目からウロコ度は買う。

しかし、演出が良くない、面白くない。 せっかくの可愛い女の子アリ、バンドのいざこざアリ、ドタバタコメディの要素アリ、いかにも悪役っぽいライバルアリと、コミックの王道の要素をいくつも押さえているのだから、演出次第では泣ける映画に仕上がったのかもしれないし、感動B級大作となったのかもしれない。

しかし、ああ、惜しい。

なんだか、演出も面白さも中途半端なB級小作に落ち着いてしまいました。

誰かリメイクしないかな? 個人的にはCDを何枚か持っているほど津軽三味線は好きなんですよ。

記:2004/08/03 

movie data

製作年 : 2004年
製作国 : 日本
監督:筒井武文
出演 : 柏原収史、鈴木蘭々、杏さゆり、賀集利樹、小倉一郎、新田弘志、新田昌弘、阿井莉沙、諏訪太郎、佐藤幹雄、万田邦敏、犬童一心、亜南博士、史城未貴、河野景子、山内健嗣、浜幸一郎、小泉まこ、中村優子、石橋蓮司、ミッキーカーチス ほか
配給:ビターズ・エンド+東京テアトル
公開 : 9月よりテアトル新宿・テアトル池袋ほか全国順次公開
観た日 : 2004/08/02

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