パヴァーヌ/原田知世

      2022/02/27

パヴァーヌ
Pavane

デジタルシンセが大活躍

ごくごく、たっま~になんだけど、原田知世の『パヴァーヌ』を聴きたくなる日が周期的にめぐってくるのです。

個人的には、大貫妙子の《地下鉄のザジ》が収録されている『バースデイ・アルバム』や、坂本龍一プロデュースで、《クララ気分》のアレンジが秀逸な『撫子純情』が好きなんだけれども、次作の『パヴァーヌ』も少々地味ながらも、確実に聴く者の記憶に痕跡を残すアルバムだと思っています。

原田知世 バースデイ・アルバム [12
原田知世 バースデイ・アルバム

撫子純情 [12
撫子純情

もっとも、『パヴァーヌ』に関しては、すべてのナンバーが好みというわけではなく、特に当時の角川映画『早春物語』の主題歌も収録されていますが、このようなヒットナンバーは今聴くと単に懐メロの域を出るものではありませんね。

他にも、彼女の声質や雰囲気とは違うんじゃないかなぁという楽曲もあったりもします。

しかし、それでもトータルとしてこのアルバムが持つムードが時折恋しくなるのは、イマイチ曲を補って余りある魅力を持つ曲が収録されているからなのですね。

そのなかの1曲が《カトレアホテルは雨でした》です。

当時、巷に出回り始めたYAMAHAのDX-7をはじめとした「デジタル音源」のシンセが大活躍しているアルバムで、特に《カトレアホテルは雨でした》なんて、まさにTOTOの『アイソレーション』と匹敵するんじゃないかと思うほど、これでもか、これでもかのDX色の嵐。

今の若い人の耳にはもしかしたら古臭く聞こえるかもしれませんが、当時、リアルタイムで、このようなクリアでエッジの立った音色を体験した者からしてみると、こういうツブダチのはっきりした音は、今聴いてもとっても新鮮なのです。

《カトレアホテル~》は、Aメロ、Bメロ、サビにいたるまでの展開やメロディも個人的にはお気に入りで、現在の原田知世にまで通底して流れている「控えめイズム」なヴォーカルが、ギリギリはじけた温度感で歌われているところもたまらなくツボなのです。

ハンカチとサングラス

《カトレアホテルは雨でした》も良いのだけれども、個人的にもっとも『パヴァーヌ』で好きなナンバーは《ハンカチとサングラス》ですね。

作詞は麻生圭子、作曲は麗美(REIMY)。

作詞も作曲も名だたる人たちではありますが、サウンドもなかなかなのです。

この気怠さ、マッタリさは、当時高校生だった私にとっては、まさにほんのりとしたオトナの世界。

使用されているベースはフレットレス。
フレットレスベースのコクのあるマッタリ感も、この曲のムードをさらに落ち着いたものにしています。

こういうムードのナンバー、アレンジこそが、原田知世のヴォーカルを活かす格好の素材なんじゃないかと当時から思っています。

斉藤由貴の『チャイム』に収録されている《アクリル色の微笑み》もフレットレスベースが印象的なナンバーでしたが、80年代中期のアイドルのアルバムには、このように秀逸なしっとり曲が、ひっそりと収録されているので侮れません。

アナザー・グリーン・ワールド

面白いことに、《ハンカチとサングラス》を聴いている私は、いつもテンポに合わせたある一定のパーカッションのパターンを口ずさんでいるんですね。

このパターンはいったい何だろう?

よくよく考えてみると、そうそうこのパターンは、ブライアン・イーノの『アナザー・グリーン・ワールド』の《サムバー・レプティルズ》ではないですか。

両ナンバーに共通点といったものは認められないのだけれども、まったりギターの《サムバー・レプティルズ》も『アナザー・グリーン・ワールド』屈指の名曲だと思っています。

ANOTHER GREEN WORLD-REMAS
Anothe Green World

そういえば『アナザー・グリーン・ワールド』も高校生の時はよく聴いたなぁ。
ま、YMO好きだったこともあり、これを聴くようになったのは、完全に細野さんと教授(坂本龍一)の影響だけど。

原田知世の『パヴァーヌ』も、イーノの『アナザー・グリーン・ワールド』も、初めて聴いた時から既に30年以上も経過しているというのに、時々無性に聴きたくなるといった点においては共通しているのかも。

もはや「3年殺し」ではなく、「30年殺し」の境地ですね。

記:2017/06/04

収録曲

1. 水枕羽枕
2. 羊草食べながら
3. 姫魔性
4. 紅茶派
5. 早春物語
6. 夢七曜
7. カトレア・ホテルは雨でした
8. HELP ME LINDA
9. いちばん悲しい物語
10. ハンカチとサングラス
11. 続けて

追記

ちなみに記事中で紹介した『バースデイアルバム』と『撫子純情』は、両方とも現在は中古のLPしか出回っていないようですね。

懐かしい、聴いてみたい!と思われた方は、リマスタリングされたCDのボックスセットが発売されているので、こちらのほうをオススメします。
ちょっと高いけど……。

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>>チャイム/斉藤由貴
>>アナザー・グリーン・ワールド/ブライアン・イーノ

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