橋本一子・Ub-Xのポリグルーヴにやられっぱなし

   

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橋本一子の『ub-x』。

聴けば聴くほど、やっぱりスゴいアルバムです、コレ。

このアルバムの発売に先駆けたライブにも行ったし、レビューも何度か書かせてもらった。

しかし、それでも、まだまだ書き足りない。

というより、聴くたびに、こちらのマインドを触発しまくる何かがある。

拡散と推進が共存するポリグルーヴが、滅茶苦茶気持ち良い。

研ぎ澄まされた一子さんのピアノ。

ハイテンションで疾走するアグレッシヴなプレイから、深く空間に溶解してゆくバラードまで、本当に変幻自在なユニットだ。

ある平日の深夜。

私は、仕事と飲みで、表参道、南青山、大門、西麻布、六本木とめまぐるしく移動していたが、傍らには常に「Ub-x」が流れていた。

この日の移動はほとんど車(タクシー)を使っていた。

クルマの窓から望むめまぐるしく移り変わる街の風景と、めまぐるしいけれども一定な蒼く哀しく尖った色彩感が奇妙にシンクロし、私の脳は一瞬、時間の感覚を忘れ、「いまここに私がいる」という存在感があやふやな、蕩けるような恐怖感に包まれた。

ub-xの演奏は、最初はドラムとピアノに耳を奪われることだろう。

しかし、何度も聴くうちに、次第にの、ベースのほうにも耳がいくようになってくる。

いまだ、井野信義の複雑かつ超絶なベースのアプローチについては語る言葉のもたぬ私だが、『Ub-x』のポリビートをガッシリと支え、藤本の変幻自在なドラミングを触発しているのは井野のベースに他ならない。

太い。しなやか。

だけど、剛。

腕力の強いインテリのベースは底知れぬ恐ろしさを秘めている。

繊細なスピード感がピアノだとすれば、ベースの低音は超時間的。

速度を超越して、常に「そこにある」存在感。

気がつくと、ピアノやドラムにピッタリとより沿った低音が常に「存在していた」。

そんな頼もしさと、時間を先読みして、ピタリと正確な位置に収まっている、そんな頼もしさと不思議な存在感がある。

マイルス『カインド・オブ・ブルー』的な蒼い空間と、コルトレーン『インター・ステラー・スペース』的な紅(くれない)に燃ゆるパッションが共存したかのような、聴き応えのある演奏なのだ。

記:2009/03/16

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