スポンジぽん!プラモ 究極の手抜き塗装法

      2021/01/30

後片付けが面倒くさい

私がエアブラシを使わないのは、準備と後片付けが面倒くさいからです(はるか昔はエアブラシオンリー人間だったんですけどね……)。

だから、プラモに復帰したときは、もっぱら缶スプレーと筆塗りの二本立てで模型制作にいそしんでおります。

しかし、最近は筆塗りも少々面倒になってきた。

なぜかというと、塗った後、筆を洗わなければならないから。

毛先に残った塗料を溶剤で落とし、さらにツールウォッシュでクリーニング、そして筆先を下にして筆を洗濯ばさみで挟んでベランダで陰干し。

ああ面倒くさっ!

……って、どれだけ面倒くさがりやねん!って感じですが。

チッピングとは異なる発想

そんなクソ面倒くさがりな私が最近凝っているのが、スポンジを使った塗装です。

塗料をスポンジに含ませて模型表面に叩きつける。

ぽんぽん、ぽんぽんと叩きつける。

たったそれだけの塗装方法です。

ふつう模型の塗装にスポンジを使用する場合は、「チッピング」といって塗装の剥がれをアクセント的に付加する技法に使用されます。

ちょっとやり過ぎ感はありますが、下の画像のハイモックの腕などがまさにそうで、パーツの表面やエッジの塗料のハガレをスポンジで表現しているわけです。

参考記事:HG ハイモック制作記

しかし、私が最近おこなっているスポンジぽんぽん塗装法は、その逆で、エッジよりも面を中心に塗装していく考えです。

むしろ、エッジは塗らない。
あえて塗り残す。

チッピングが、完全に塗装した後にアクセント的に施す塗装だとすれば、私の「スポぽん」は、メインとなる基本色をスポンジを使って全面塗装をしてしまえ!という方法なのです。

ものぐさマインドが生んだ手抜き塗装法

塗装の方法も、かなり手抜きです。

塗料と塗料を混ぜて色を作る、いわゆる調色作業も面倒なんで、ほとんどしません。

調色スティックで塗料を攪拌してから塗料皿に移す?

それも面倒なんで、ほとんどしていません。

塗料のビンを思い切り上下に振って、蓋を開けたら、蓋の裏にある半透明の柔らかいプラスチックに付着した塗料をスポンジに含ませて、あとは模型に叩きつけるだけ。

ああ、なんてカンタン。

しかも、後片付けも使用済みのスポンジをティッシュにくるんで捨てるだけ。

筆のように洗って干すという手間すらいらない。

もうこのへんでやめようと思ったら、塗料に蓋をして、スポンジを捨てるだけで後始末完了!

しかも、仕上がりのほうも、なんとなくソレっぽい。

参考記事:青ジオ・ビーム・スナイパー! HGUCジ・オ塗装レポート

ソレっぽいというのは、綺麗に塗装した後、エナメル系塗料でウォッシングやスミ入れをしたり、油絵具でフィルタリングをかけたり、ドライブラシをかけたり、ウェザリングマスターやパステルを擦り付けたりといった、一連の作業を経過したかのような効果が、スポンジをぽんぽんするだけで得られるというコスパの高さがあるのです。

もちろん、スポンジ塗装が終了した後に、改めてスミ入れしたりドライブラシをしたほうが、より一層立体感が生まれるので、私はスポンジ塗装の後はウェザリングカラーでスミ入れやフィルタリングをすることのほうが多いのですが、それが面倒な場合は、無理してそれら一連の作業を放棄しても、「それっぽい仕上がり」になるのです。

たとえば、このジムキヤノンIIの腕周辺は、スミ入れをしていませんが、スポンジが届かなかった凹面の塗り残しが、ほんのりとスミ入れをした時のような奥行きを生み出しています。

参考記事:ジム・キャノンII制作記

この手軽さがあるからこそ、気軽にプラモ塗装に取り掛かれるます。
結果的に制作ペースもアップ!

制作ペースが上がれば、それだけ経験値も増えるわけで、経験値が増えれば、上達の速度も速い(はず)。

なんとまあ、いいことずくめの塗装法なのです、スポンジぽんぽん塗装、略して「スポぽん塗装」は。

「仕込み」について

もっとも、スポンジで塗装するまでの下準備は必要です。

それは模型表面の塗膜作り。

とにかくプラスチックのツヤツヤした質感は徹底的に表面に出さない。

目に見えるプラの部分は、徹底的に塗りつぶす!塗りつぶす!塗りつぶす!

筆塗りで塗りつぶすのも良いのですが、どうしても時間がかかってしまいます。

ですので、私の場合は缶スプレーのサーフェイサーを吹くことで模型表面のプラ地を塗りつぶしています。

シュッシュッと軽く吹いて30分ほど乾燥させ、再びシュッシュッと今度はプラスチックの下地が未だ露出しているところを目がけて噴霧。
また数十分乾燥させて最後のひと吹き。

だいたい3回くらいで完全にプラ地は消えてしまいます。

参考記事:黒・白・赤の三色ザクを作ってみます

コツは一度に全体をまんべんなく塗りつぶそうとしないことです。

少し吹いては乾かし、少し吹いては乾かし。

この繰り返しが大事です。

私の場合は黒やマホガニー、たまにオキサイドレッドのサーフェイサーの缶スプレーを使用していますが、もちろん、普通の塗料の缶スプレーでもまったく構いません。

なぜ私は普通の塗料のスプレーではなくサーフェイサーを使用しているのかというと、サーフェイサーのスプレーのほうがお得だから。

たとえば、下地に適した色・マホガニーを塗るにしても、マホガニーのサーフェイサーのほうが塗料のマホガニーのスプレーよりも安くて量が多いのです。

単にケチなだけですね……。

サーフェイサー吹くと、モールドが潰れるとよく言われますが、ガンプラにはハセガワの飛行機モデルのような繊細な筋彫りとかはあまりありませんから、そこらへんはあまり気にする必要なないのではないかと。

で、下地を吹いて、プラ地を埋め尽くし、塗膜を作ったら、あとは下塗り作業をします。

下塗りに使用する色は、作る作品の色によって変えていますが、緑系やグレー系にはハルレッド、白系の色には、グレーやメタリックシルバー系の色を使うことが多いですね。

この作業は筆塗りです。

下の画像は、ハルレッドで下塗りをした状態です。

土器の色っぽくもあるので、塗った後の変化を目で楽しむことも出来ますね、ハルレッドは。

下塗りに使用する筆は、100円均一ショップで売られている安い筆で、ガシガシとかなりラフに塗ればOK。

あくまで下地塗装に使う筆なので、べつに高い筆で塗る必要はなく、とにかく短時間で大雑把に全体を塗れればいいやと私は考えています。

仮に塗り残したとしても、スプレー塗装で作った塗膜があるので、プラスチックの地肌が露出するということはありませんからね。

使用する塗料は、ラッカー系でも水性でも、タミヤのアクリルカラーでも構いません。
ちなみに、エナメル系は乾くのが遅いので、私は下塗りに使用したことはありません。
顔料と溶剤の配合を間違えると、プラスチックをパキッ!と割ってしまいますしね。

ですので、エナメル系を除けば、ラッカー系塗料にしろ、水性塗料にしろ、アクリル系塗料にしろ、この筆塗り作業は、既にサフを吹いて塗膜が出来ているので、塗料の食いつき、乗りが良く、あまりムラを出すことなく、サクサクと塗れることでしょう。

いよいよポンポン

この一連の仕込み作業が終了したら、あとは塗りたい色を、スポンジでポンポンと叩きつけていくのみです。

ラッカー系塗料でも可能ですが、私の場合は、タミヤのアクリルカラーを使用することが多いです。

クレオスの水性カラーも良いのですが、あくまで個人的な感覚なんですが、塗料の粒子にコクとコシを感じられるタミヤアクリルのほうが好みなのです。
水性カラーは、個人的には、なんとなく軽くてさらさらしているように感じ、ベッタリ、ネットリ系な色調が好みな私としては、現在のところタミヤのアクリルがベストですね。

蓋の裏に付着した塗料をスポンジで擦り取って模型表面に叩きつけるわけですが、コツは一気に塗ってしまおうとするのではなく、何度かに分けてスポンジを叩きつけていくことです。

このジム寒冷地仕様の盾のオーシャングレーは2回目のスポンジぽんぽんをした後です。

参考記事:寒冷地ジムをアクリル筆塗り塗装

まだまだ下地のレッドブラウンが目立ちますよね。

同じ色を何度かに分けて叩きつけても良いのですが、私の場合は同じ色ばかりだと面白くないので、段階をつけて少しずつ明るい色を叩きつけることが多いですね。

たとえば、白で塗りたい場合は、ジャーマングレーの下地の上に、ダークグレー(あるいはニュートラルグレー)、明灰白色(あるいはロイヤルライトグレー)の順にスポンジを叩きつけ、最終的にホワイトを乗せています。

これだけの色を重ねていくわけなので、しかも、かなりラフかつランダムに叩きつけていくわけなので、スプレーで吹いた工業製品のような単一でのっぺりとした塗装にはならず、かなり絵画チックというか、味のある複雑な塗装面になってくれます。

コツはまんべんなくスポンジで塗りつぶそうとは考えないことです。

むしろエッジの箇所は窪みの箇所は、わざと塗り残したほうが「それっぽく」なります。

複雑な形の場合は、そもそもスポンジが届かなかったりもするので、届かないところはそのままにしておけば、奥まったところの塗料が剥がれている、もしくはサビが発生しているというように見えます。

たとえば、ハルレッドの場合ですと、単色では、埴輪は土器のような色に見えるかもしれませんが、その上に、他の色が乗ると、相対的な見え方の効果で、アカサビが浮いているようにも見えます。

以前の私は、基本塗装が終了した後に、エナメル系の塗料を薄めて筆塗りをしたり、ドライブラシをしたり、ウェザリングマスターを擦りつけてなどの手を加えてサビっぽいニュアンスを表現していましたが、スポンジ塗装法を用いれば、このような面倒な手続きをしなくても、「模型表面にスポンジを叩かない」というワンアクション、いやアクションすらしないことによってサビっぽい感じを表現出来てしまうのです。

これだけでも、かなりメリハリのある感じになってくれますが、さらにその上から、ブラウン系やオレンジ系の色を叩きつけると、ウェザリングの効果も出すことが出来ます。

上の画像のジムの脚は、クリアオレンジをスポンジぽんぽんした後に、さらに上からフラットホワイトをスポンジぽんぽんしていることで、油汚れやサビっぽい表現になっています。

参考記事:MGジム改制作記

最後にもうひとつ例を出すと、このユニオンフラッグカスタムは、意図的にかなり塗り残しを作っています。

下地の茶色がブツブツと丸見え。

解像度の高い画像を拡大したで見ると、さすがにこれは塗り残し過ぎというか、もし現実にこの兵器が存在したら、明らかに整備されずに放置されたポンコツ機体となってしまうでしょう。

しかし、手元で実際のサイズで見ると、それほど違和感を感じないのが面白いところ。

参考:オーシャングレー2でユニオンフラッグ・カスタムを塗ってみました。

模型における、リアルに見せるための「嘘」ではありますが、作業の気楽さと、少ない手数で大きな効果が得られるので一度ハマれば病みつきになること請け合いです。

逆転の発想

模型のウェザリングに関しての通常の考え方は、「綺麗に塗って⇒汚していく」という順序が一般的ですが、スポンジ塗装の場合の発想はその真逆といえましょう。

つまり、汚い状態を少しずつ綺麗にしていくという感じです。

とにかく、最初の段階はけっこう汚い、というか、スクラップ寸前の「錆び錆びメカ」のように見えます(特にハルレッドを下地に塗った場合)。

しかし、少しずつスポンジで色を重ねることによって、だんだんとオンボロなメカが現役で活動しているかのように見えてくる。
つまり若返っていくのです。

時間は未来から過去に流れているという思想もありますが、まさにスポンジ塗装をほどこされる模型の時間も、未来から過去に流れていくかのごとくなのです。

ものすごく簡単ですし、使用するスポンジも、100均で売っているキッチンスポンジ5個セットのような安価なものですから、気軽に始められます。

これを使用するに必要な大きさにハサミで切り取って使用し、使用後はゴミ箱にポイ。

ああ、なんてカンタン。

興味ある人はぜひお試しください。

手っ取り早く試したい人は、パーツが少なくすぐに組めるガンプラを買ってきて、速効で組み立て、スポンジぽんぽんすると良いと思います。

私の場合はザクを作りながら少しずつメソッドを確立していきましたが、ザクよりさらにパーツが少なく値段の安いジムやボールが良いかもしれませんね。

量産機なので、何個作って飾っても違和感ないどころか、むしろ量産機ならではの迫力を生み出すことが出来るでしょうから。

それにボールは2個セットですから、練習用にはもってこいかもしれません。

たぶん、キットを2つほどトライすれば、感覚はかなり掴めると思いますよ。

記:2018/12/03

 - ガンプラ