トーン・ダイアリング/オーネット・コールマン

   

サウンド変われどオーネットは変わらず

同じプライムタイムの演奏でも、この『トーン・ダイアリング』のサウンドは、『ダンシング・イン・ユア・ヘッド』や『ヴァージン・ビューティ』と比較すると、原始的な荒々しさは息をひそめ、サウンドの一粒一粒がすっきりと整理整頓され、落ち着いた肌触りに感じる。

上記2枚と比較した場合、無鉄砲な勢いは陰を潜めてはいるが、そのかわり、じっくりと腰の据わったサウンドだ。

とはいえ、アルトサックスを吹き始めたオーネットの出だしの3音目あたりから既に、濃厚に「うーん、オーネット!」としか言いようのない独自の世界が展開されるのはサスガ。

いつものオーネット。そう、決して手持ちの得意フレーズが多いとはいえないオーネットではあるが、オーネットにしか出せない味のある、いつものワンパターンフレーズだ。
しかしこのワンパターンが好きな人も多いはず。
かくいう私もそうだ。

ふわふわオーネット

ジャケ写も含め、ライナーノーツのタイポグラフィも、中身のサウンドを象徴するかのように、スッキリとお洒落なデザインだ。
まるで、iPod miniのパッケージを彷彿とさせるカラーリングは、もちろんこのiPodが世に出るおよそ10年前のアートワークだ。

スッキリとしたサウンドとはいえ、やはり漂うテイストは、オーネットにしか出せない、軽やかなワフワ味。

それは、4ビート時代とリズムが著しく変わろうが、ラップをいれようが、背景で複数のギターが絡みあおうが、まったく変わることのない、オーネット・ワールドなのだ。

飄々とした彼のアルトサックスの音が、フワフワとオケと交わっている限りは、「これはオーネットの音楽以外の何者でもありません」と音が無言に主張してる。

強烈ではないかもしれないが、しなやか、かつ力強く。
調子っぱずれと紙一重の寸止め的ポップ感覚。
ありそうでなさそなサウンドの典型。

オーネットは年齢を重ねるにつれ、より一層の軽やかさを獲得していることを感じさせるアルバムだ。

記:2006/05/04

album data

TONE DIALING (Harmolodic/Verve)
- Ornette Coleman

1.Street Blues
2.Search For Life
3.Guadalupe
4.Bach Prelude
5.Sound Is Everywhere
6.Miguel's Fortune
7.La Capella
8.OAC
9.If I Knew As Much About You (As You Know...)
10.When Will I See You Again
11.Kathelin Gray
12.Badal
13.Tone Dialing
14.Family Reunion
15.Local Instinct
16.Ying Yang

Ornette Coleman (as,tp,vln)
Dave Bryant (key)
Chris Walker (key,b)
Chris Rosenberg (g)
Ken Wessel (g)
Bradley Jones (b)
Al MacDowell (el-b)
Badal Roy (tabla,per)
Rudy MacDaniel (drum programing)
Avenda "Khadijah" Ali (vo)
Moishe Naim (vo)

release date 1995/09/26

 - ジャズ