ア・タートルズ・ドリーム/アビー・リンカーン

   

染みる、染みてくる

落ち込んでいるときに、このアルバムを聴くと、ますますミジメな気分になりそうなので注意が必要だ。

アビー・リンカーンといえば、マックス・ローチの元奥さんで、彼が打ち出していた60年代の黒人開放運動の一環としての“プロテスト・ジャズ”の先鋭的な一員というイメージが強かった私。

しかし、90年代にカムバックを果たした彼女の歌唱スタイルはずいぶんと変化していた。

年齢のせいもあるのは仕方がないことだが、やはり歌声には、かつてのハリはない。しかしその分、メロディをとても大事にしながら、じっくりと歌い上げる歌唱には心が揺さぶられる。

しみじみと歌い、じわじわと染み込ませる。

まさにベテランならではの表現力。

ヘンなたとえだが、この切々と心の中に訴えかけるようなアビー・リンカーンの歌唱は、場末の飲み屋で、若くもないし、美人でもないし、スタイルも良くないけれども、人生の酸いも甘いも経験しつくしたような“おばちゃんママ”の歌が、妙にささくれた心にじんわりと染みてくるような、なんだかそのような感じ。

永遠に朝がこないように感じられる夜の一人酒とともに。

また、さだまさしの《秋桜(コスモス)》のメロディが好きな人にもお勧め?!

記:2003/03/23

album data

A TURTLE'S DREAM (Verve)
- Abbey Lincoln

1.Throw It Away
2.A Turtle's Dream
3.Down Here Below
4.Nature Boy
5.Avec Le Temps
6.Should've Been
7.My Love Is You
8.Storywise
9.Hey, Lordy Mama
10.Not To Worry
11.Being Me

Abbey Lincoln (vo)
Roy Hargrove (tp)
Julien Lourau (ss,ts)
Rodney Kendrick,Kenny Barron (p)
Pat Metheny (g,elg)
Lucky Peterson (g,background vo)
Charlie Haden,Christian McBride,Michael Bowie (b)
Victor Lewis (ds)

track 1
Laurent Cuguy (String Arrangements)
Pierre Blanchard,Vincent Pagliarin (vln)
Frederic Fymard (viola)
Anne-Gaella Bisquay,Marc Gilet (cello)

track 3
Randoloph Noel (String Arrangements)
Sandra Billingslea (vln)
John Robinson (cello)

1994/05/29 & 11/07 & 08

 - ジャズ