アウト・オブ・ノーフェア/マッシモ・ウルバーニ

   

これを聴く前に聴いて欲しい2曲

もっと聴かれてしかるべき素晴らしいイタリアのアルトサックス奏者、それがマッシモ・ウルバーニだ。

1958年生まれのウルマーニは、活動拠点のほとんどがイタリア。
それゆえ、多くの日本人ジャズファンにとっては馴染みの薄い存在かもしれない。

さらに、1993年に亡くなっているため、今後は新譜も発表されることがないため、今後はますます忘れ去られてしまう可能性があり、それはなんとしても避けたい。
是非、ジャズ好きの記憶にとどめておいて欲しいアルト奏者の一人だ。

彼を知るには、まずはレッド・レコードから出ている『デディケイション・トゥ・・アルバート・アイラー&ジョン・コルトレーン』を聴いて欲しい。

特に《マックスズ・ムード》がおすすめ。

スピード、テクニック、そしてもしかしたら、演奏に臨む気迫や熱量もコルトレーンを上回っているのではないかと思わせるほどの力量。

フリークトーンも交えながら、後期の過激になっていくコルトレーンの音楽を、マッシモ流に我が物にしている。

ま、コルトレーンが先行者で、それ以降に生まれ活躍した他のジャズマンは後だしジャンケンなので、上手くて当たり前なんだけれど、とにかくコルトレーンをはるかに凌駕するスピード感、テクニックは爽快。

これを聴いて、ウルバーニの圧倒的な熱量とテクニックを堪能したら、次に「冷まし」として聴いて欲しいのが、『ナイト・オブ・ザ・ブッシャー』というアルバム。

この中に収録されている、ジョヴァンニ・チェッカレッリというピアニストとデュオで演奏されている《アウト・オブ・ノー・ホエア》も聴いていただきたい。

まるで、チャーリー・パーカーが湯上りに銭湯の軒先か、家の縁側でサックスを吹いているような感じ?
これ、パーカーのプライベート録音だよと言ってもバレないほど、パーカーそっくり。

ただ、パーカーと違うところは、パーカーはどんなバラードを演奏しても徹頭徹尾クールなところがあって、ベタな哀感や情感というものは、ほとんど込めいないんだけれども、ウルバーニのアルトには、ほんのりとした切なさ、寂寥感がある。

これがたまらんのだね。

で、このアルバムの《アウト・オブ・ノー・ホエア》を聴いた後に、同じ曲が演奏されているオーソドックスな2ホーン・クインテットのアルバム『アウト・オブ・ノー・ホエア』を聴こう。

最初から、これ聴きゃええやんか?!と思われるかもしれないが、これを最初に聴いてしまうと、おそらくは、「ああ、よくある典型的な2ホーン4ビートね」とスルーされてしまう懸念があるのだ。

まずは、ウルバーニというアルトサックス奏者の個性の両極、つまり激しい演奏と枯れた味わいを知り、彼のサックス奏者としてのレンジの広さを捉えた上で、このアルバムを聴くと、単なる「ヨーロッパのオーソドックス・ハードバップ」という認識で耳をスルーしないから。

とはいえ、まぁ、先述した2枚に比べると、いちばん無難な演奏集でもあり、だからこそ先述した2枚を先に聴いていただきたいわけなんだけど、ポール・ロッドバーグのトロンボーンにしろ、ジュゼッペ・エマニュエル(p)、ネロ・トスカーノ(b)、プッチ・ニコシア(ds)のリズムセクションのサポートもツボを抑えたサポートで、非常に心地よい。

記:2019/06/25

album data

OUT OF NOWHERE (Splasc)
- Massimo Urbani

1 I'll Remember April
2 Alfie
3 There Is No Greater Love
4 Out of Nowhere
5 Autumn in New York
6 Yesterdays
7 Invitation
8 Tenor Madnenss

Massimo Urbani(as)
Paul Rodberg(tb)
Giuseppe Emmanuele(p)
Nello Toscano(b) 
Pucci Nicosia(ds) 

1980/04/23

YouTube

動画でもこのアルバムを紹介しています。

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