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ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

『山田孝之の東京都北区赤羽』が醸し出す絶妙な空気感

      2018/01/17

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いわゆる「フェイクドキュメント」なのだろうけれども、痒いところが妙にリアルで、そのへんの現実と虚構の境界線が曖昧な、ある種独特な「痒さ」がたまらない作品だ。

山下敦弘監督は、この手の空気というか雰囲気づくりがとても巧い。

微妙に不愉快な空気というか。
不穏でないけれども、決して楽しいというわけでもない微妙な空気感を作らせたら、山下監督の右に出る者はいないのではないか。

赤羽に住む(おかしな?)人たちは、マンガに登場する人たちそのもの。
コミック『東京都北区赤羽』の作者、清野とおる氏が描く人物像は、リアルな人間をきちんと紙の上に落とし込んでいると思う。

もっとも、作者自身はコミックに登場する「陽」のキャラかと思っていたら、実際にこの作品に登場する本人は、そこはかとなく怪しさの漂う人物ではあったけど。

悩ましい表情の山田孝之、素の姿だと少しおどおどしていて、少し早口なところが新発見。

これも半分演技なのか?

山田孝之の、あの濃い顔が悩ましげになればなるほど、良い案配でどこか突き抜けきれない中途半端でダルな空気感の濃度が増し、山下監督の的確な「イラッと」させるような会話のキャッチボールが、ソフトかつ的確に山田孝之の感情をあるときは逆撫でし、ある時は迷走へと拍車をかけ、とにもかくにも独特なヘンな空気を作り出すことに成功している。

やはり、このような面白くはないけれども不愉快というほどでもない何とも言えない独特な空気を作り出すことにかけては、山下監督の右に出る者はいないのではないかと思う。

『松ヶ根乱射事件』や『超能力研究部の3人』、それに『もらとりあむタマ子』など過去の作品にしてもそうだったけど、何と言うのかな? 銚子の濡れせんべいのような、パリッ!サクッ!としていない独特な湿り気感というのかな? 

この独自の山下ワールド、あるいは山下監督が思い描いたラフな設計図の中においては、あの山田孝之でさえも、ひとつのパーツに過ぎないのではないかと思ってしまうほど。

ちなみに、エンディングテーマの歌も山田孝之だが(山田孝之が書いた詞に、イエロー・モンキーの吉井和哉が作曲)、歌のほうも、なかなか上手だと思った。
最初はクレジットされていなかったので誰の歌かと思ったけど。

記:2017/08/27

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