リンダ リンダ リンダ/試写レポート - カフェモンマルトル

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ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

リンダ リンダ リンダ/試写レポート

      2018/08/13

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留学生を演じるペ・ドゥナ

韓国の実力女優、ペ・ドゥナが、日本高校の女子バンドのヴォーカルに。

文化祭で歌う曲は、なんとブルーハーツ。

この、なんとも奇妙だが新鮮な取り合わせが『リンダ リンダ リンダ』の骨子だ。

驚いた。

何にって、ペ・ドゥナの変身っぷりにだ。

『子猫をお願い』では、表情豊かに仲間を気遣う微妙な役柄の女の子を見事に演じ、『チューブ』では気丈で一途な女スリを演じ、小悪魔的な魅力をも魅せた彼女が、今回は、日本の地方の高校で、なんとも地味で質素などこにでもいそうな韓国の留学生を演じている。

マンガが好き。
人の色恋沙汰にはニヤニヤと興味を示す。
話をあまり理解しないまま適当に返事をしてしまう。

そんな、ちょっとオマヌケな要素のある韓国からの留学生が、今回のペ・ドゥナが演じるキャラクターだ。

大雑把なストーリー

そんなペ・ドゥナが、崩壊寸前のバンドのメンバーから、半ばヤケクソに「ソンさん(ペ・ドゥナの役名)、バンドやんない?」の一言に、意味をよく理解しないまま「ハイ!」と元気よく返事をしてしまうのが、文化祭の前日。

彼女が加入したバンドは、オリジナル曲を文化祭のためにミッチリ練習したにもかかわらず、ギタリストが指を骨折し、ヴォーカルが脱退してしまったという空中分解寸前の女の子バンド。

ドラムとベースはそのままだが、キーボード担当のローレライ、じゃなくて香椎由宇がギターに持ち替えて、ブルーハーツのコピーをやろうと決まったところまではいいが、いざヴォーカルは誰がやる?という状態のときに、たまたま通りかかったペ・ドゥナに声がかかる。

そして、文化祭最終日のライブに向けて、猛特訓し……、というのが大雑把なストーリー。

練習→本番→盛り上がる

という構図は、『スウィングガールズ』そのものだが、『スウィングガールズ』的なノリを期待して観ると、ズッコける。

独特な歯切れの悪さと「間」

ストーリーの基本的な骨格は似ているにもかかわらず、『スウィングガールズ』的な「努力が開花した!」的なカタルシスは期待しちゃあかん、のだ。

なぜかというと、この映画、全体的にノリが良くない。

音楽映画だというのに、しかも、ノリノリのブルーハーツを冠した映画だというのに、ノリも歯切れも悪いのはどうしたことか。

ひょっとしてワザと?
だとしたら、考え過ぎ。

それとも、これが監督独自のテイスト?

この映画に見られるタイム感とテンポ感が、この監督の持ち味だとするのならば、音楽以外の題材で才能を発揮させるべきなんじゃないかと思った。

なんだか、煮え切らない優柔不断な優等生(こういう人、クラスにいましたよね?)的なテイスト。

「そんな深い意味なんてないんだってば!」なところにも、深い意味を見出そう&付加しようとする傾向が強く、「考え過ぎだってば!」な「間」が多すぎる。波長が合えば面白いのかもしれないけどね。

漂うテンションも、ため息が出てしまいそうな「間」も、湿気た煎餅みたいでパリッとこない。

これが演出意図なのかもしれないが、もう少しノリよくコンパクトにまとめてくれても良かったのでは?

短か目に、テンポの良い編集でこそ映えるストーリーなのでは?
そのほうが、まだ映像にノリも芽生えてくるかもしれないし。

このストーリーで2時間弱の上映時間は、長く感じた。

漂うまったり感は、ラストのステージのカタルシスに結びつけるための布石なのだろうか?

それにしても、だいたいのオチも展開も分かっている中、ジラしにジラされたお約束のラストがやってきても、「ああ、やっと終盤ね」って感じで、それほどの感興が湧くものでもない。

べつに『スウィングガールズ』を期待して観たわけではないが、「高校生・バンド・ブルーハーツ」などのキーワードから、ハジけた映像を勝手に期待していた私。

だって、パンクじゃないですかぁ?
しかも、ブルーハーツの「りんだ、りんだぁ!」じゃないですか。
……しかし、あんましハジけて無かったっす。

この映画のノリに関しては、大きく評価&好き嫌いが分かれるところだろう。

これが山下監督のノリなんだから、それはそれでいいじゃん! という人もたくさん出てくると思う。

こういったテイストのほうがリアルでいいんじゃない?という感想を抱く人もいると思う。

このへんは、各人、実際にご覧になって判断してね。

本国でのペ・ドゥナ観

個人的には歯切れの悪い「音楽ムーヴィ」だなとは思ったけれども、見どころを変えれば、ツボにハマる面白さもあるのかもしれない。

ちなみに、ペ・ドゥナは私が大好きな女優だ。
本国の映画では、あんなに生き生きとして存在感とオーラを放つ実力派女優が、ちょっと奇妙なお客さん扱い的な存在に終始していたのが残念。

もちろん、留学生というポジションゆえ、周囲からは気を使われる役どころではあるのだけれども、映画の中では、終始、「リトル・ストレンジなお客さん」的な扱われかたで終わっていた。

そんな女の子が、ブルーハーツを歌うというギャップを狙ったのだろうけれども、そのギャップがすべてでもあり、それ以上のものは無かった。

彼女の多彩な才能と魅力を生かしきった内容とは到底思えない。
ま、こんなペ・ドゥナもアリかもね、で終わってしまいそう。

私の彼女に対しての評価は上記の如くだが、本国の人たちは必ずしもそうは思っていないところもあるのかもしれない。

先日、アメリカに行った際、たまたまパーティで同席した韓国から来た若いビジネスマン&ウーマンに、英語で「私は韓国の映画も好きで、『シュリ』以来、結構たくさん観ているほうだと思います。中でもペ・ドゥナが、チョン・ジヒョンやチェ・ジウなんかよりも、断然お気に入りですね」みたいなことを話したら、彼らは「?」な顔を浮かべて、一言、「彼女はちょっとストレンジ」と言っていたことを思い出した。

彼女のデビュー作は、なんと韓国版『リング』での貞子役なのだそうで。
実力やルックスよりも、個性派として認識されているのかもしれないね。
だとすると、個性派女優の個性的な一面を引き出してはいるのかもしれないね、『リンダ リンダ リンダ』は。

ベーシスト・関根史織

個人的には、ベースの関根史織が良かった。

ベーシストの役柄にありがちな、メンバーの中ではいちばん落ち着いているしっかり者といった役だが、彼女にはピッタリの役柄。地味だけれども、バンド内においても、自分だけのポジションをしっかりと押さえている。

ちなみに彼女は現役のベーシスト。
『HIGH COLOR TIMES』というファースト・アルバムを出したばかりの女の子だ。

勢いとノリが最も大事なブルーハーツの歌に、楽器のうまい下手はあまり関係ないけれども、それでも、しっかりと安定したリズムを奏でておりましたです。

彼女の、ささやかながらもしっかり者な姿は、この映画の隠れたツボ。
この点に関しては、観る価値アリだと思う。

記:2005/03/28

追記

その後、山下監督の『松ヶ根乱射事件』を観たが、なるほど!山下監督が持つテイスト、癖、作風がなんとなく分かってきた。

やっぱり、独自の「間」や、気だるく面白くない空気を漂わすのが巧いんだよね。

いや、それは狙ってやっているのか、自然にそのような作風になってしまうのかは分からないけれど。

このような「テイスト」を把握した上で再度鑑賞すれば、また違う発見があるかもしれない。

参考記事:松ヶ根乱射事件/試写レポート

movie data

『リンダ リンダ リンダ』
監督:山下敦弘
製作:根岸洋介、大島 満、高野健一
プロデューサー:根岸洋介、定井勇二
脚本:向井康介、宮下和雅子、山下敦弘
出演:ペ・ドゥナ、前田亜紀、香椎由宇、関根史織、三村恭代、湯川潮音、山崎優子、松山ケンイチ、小林且弥、近藤公園、三浦哲郎、三浦誠巳、浜上竜也、山本浩司、山本剛史 ほか
観た日:2005/03/25

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