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ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

『十年 Ten Years Japan』試写会記

      2018/09/12

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十年後の日本

10年後の日本を描いた短編作品×5つの映画です。

テーマと概要は以下の通りです。

75歳以上で低所得の高齢者に安楽死を営業する厚生労働省の営業マンのお話しの『PLAN75』。

AIに管理された国家戦略IT特区の小学校と反抗的な少年のお話しの『いたずら同盟』。

親の生前のデジタル遺産を覗いてしまった女子高生のお話しの『DATA』。

放射能による大気汚染で地上に住めなくなり、地下の世界に住む人々と地上の世界に憧れる少女を描いた『その空気は見えない』。

徴兵制が復活した日本、既に今日もどこかで交戦中の日本で防衛省からポスター制作を依頼されている広告代理店の社員を描く『美しい国』。

はい、どれもが予想されうる日本の未来を描いた作品となっていますが、どれもが、明るくありません。

というより、どれもが既に昭和の時代に星新一がショートショートで題材にしていたような世の中が、いよいよ十年後の日本に迫っているということなんでしょうかね。

憂鬱な未来

個人的には、1つくらい明るいテーマの作品があっても良いんではないかと思ったんですけどね。

暗いトピックスを取り上げたほうが、そりゃあ現実のことをよく考えていると思われるし、頭良さげだし、社会のことを真剣に考えているインテリ社会派風ではあるかもしれません。

なにせ総合監修が社会派のイメージの強い是枝監督ですから、シリアスっぽい内容じゃないと冠のイメージと矛盾するという判断もあったのかもしれません。

それに、20世紀にノストラダムスの大予言や富士山大噴火のようなネガティブな未来を予想した本がベストセラーになったように、人々が食いつくトピックスって明るい話よりも暗い話が圧倒的に多いですからね。
週刊誌も夕刊紙の見出しも、明るい話題で売れるのってスポーツくらいなのが現在のニッポンですから、楽観的なトピックスを取り上げにくいのも分かります。

でもね、誰もが予想できる憂鬱な社会を『世にも奇妙な物語』よりも、もう少し偏差値高いです風に作って、問題提起をしているつもりになっているような気がしないでもないんですよ。

もちろん、ベテラン俳優が多数出演していることも手伝って、学生が作った映画よりはクオリティ高いかもしれないけれども、だからこそプロ達の手によって明るい題材も一つくらい混ぜてもらえたほうが、オムニバス作品としてのバランスが取れたんではないかな、って勝手に思っています。

杉崎花と田中哲司とラーメン

上記5つの映画の中で、明るいわけではないけれど、唯一ほっとするというか深刻になり過ぎずに「人間ドラマ」として見れたのが、杉咲花と田中哲司の『DATA』ですね。

杉咲花の存在感が随分と前後2つの作品の陰鬱なムードに彩りを与えていますね。

5つの作品の真ん中に配したのも、そのような意図があったのかもしれません。

そのうえ、父と娘を演じる田中哲司と杉崎花がラーメン屋のカウンターでラーメンを食べているシーンがなんとも良いですね。

田中哲司がじつに自然に美味そうにラーメンを喰っています。

麺をすすり、語り、スープを飲み、結構たくさんのセリフを語るのですが、このシーン、もしNGになったらどうなっちゃうんでしょう?

また最初からラーメン喰い直し?

羨ましいぞ!!

この試写を観終わた後、思わずラーメン屋に走り大盛りラーメン食べちゃいましたよ(野郎ラーメンの豚野郎)。

2028年に笑える映画であって欲しい

とにもかくにも、十年って、けっこうあっという間です。

今から十年前を振り返ってみると、町の景観や、人々の生活スタイルは大きく変わっておらず(と私は感じる)、身近なところで変わったものといえば、すぐに思いつくものといえば、秋葉原で売っているものばかりのような気がします(と私は感じる)。

たとえばダイソンの掃除機は十年以上前から存在していましたが、十年前に使っていたものよりも、はるかにコンパクトで洗練されたデザインになりました。

それからスマホですかね、大きな変化を感じたのは。

十年前は、折り畳み式の携帯電話(私はスライド式を使っていましたが)と、音楽聴くのはiPod、写真を撮るのはデジカメと3つのデジタル機器を常に携帯していましたが、今はiPhone一台で事足りている。個人的には、これが一番大きな変化かもしれません。

今から10年前に書いた2008年の日記やらエッセイなど、このサイトにアップしたテキストをランダムに読んでいるのですが、なんだか昨日のことのよう。

要するに、10年経っても私はまったく成長していない証ということでもあるのですが、そんな時代の変化に鈍感な私は、この程度の変化しか感じ取れないんですが、今後の10年は、2008年から2018年に至るまでの変化以上に劇的な変化が訪れるのでしょうか。

個人的には、今から10年後は、「2008年に作られた『十年 Ten Years Japan』って、今考えれば笑えるよね」と言えるような世の中であって欲しいと思います。

↓映画情報詳細はこちらをどうぞ
是枝監督 総合監修 国際共同プロジェクト『十年 Ten Years Japan』今、日本の未来を世界に発信する意味

記:2018/09/11

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