カフェモンマルトル

text:高野雲

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超時空メルヘン「ババジ君」第11話

      2016/12/11

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第10話の続きです。

ところかわって産土号の操縦席です。

もうそろそろ、予定地点に到着する頃です。

「隊長、どうしましょう。デリーの街中に着陸するわけにも行きませんし、どこか近くの広い空き地を探しましょうか?」

とユニワノイナホが隊長に聞きました。

隊長は、さきほどから腕を組みながら「おかしい、ヘンだ」とブツブツ独り言を連発しています。ユニワノイナホの言葉は耳に届いていないようです。

ユニワノイナホはもう一度尋ねました。

「あの~、隊長。着陸場所なんですが~」

我に返った隊長。

「え、ああ、着陸地点か、そうだな、適当な場所に降りてくれ。くれぐれも安全な場所にな。」

「わかりました。ところで、隊長、さっきから独り言を言っているようですが、どうかしたんですか?」

「卑魔螺野のことで、少し気になることがある。まぁ詳しくはアヤナギノ・サワヤミコたちが調査してくれるだろうから心配はいらんが・・・」

と言い、隊長はまた腕をくみ、遠くを見る目をしました。

産土号は轟音を立てつつ緩やかに降下を開始しました。

 

どれだけ意識を失っていたのかはわかりませんが、照り付けるような日差しは相変わらずなので、そんなに長い時間は草むらに横たわっていたわけではなさそうです。

ババジ君はゆっくりと起き上がりました。体全体に鈍い痛みが走ります。

へんな服装を着た、ヘンな女の子はどこかに行ってしまったらしく、辺りに人の気配はありません。ババジ君の足元には、細かく引き裂かれたピンクのブラジャーが散らばっています。さっきの女の子が剣で引き裂いたに違いありません。

ポケットを探ると、中身はカラッポでした。

売上げのお金は、いつもこのポケットに入れているはずです。

きっとあの女の子に盗られてしまったのでしょう。

ババジ君は何だか無性に悲しくなってきて、涙がぽろぽろとこぼれてきました。

女の子に負けたこと、お金を盗られてしまったこと、ランジェリーパブ遊びに使おうと思っていたピンクのブラジャーをズタズタに引き裂かれてしまったこと、家に帰ったらお父さん、お母さんにきっと叱られるであろうこと、それにお腹が空いて食べ物が無いことなど、様々な思いがめぐり、どうしていいのか分からなくなり、溢れ出した涙が止まりませんでした。

とりあえず、今のババジ君にはお金が必要です。デリーに引き返そう、とババジ君は思いました。デリーの街に行けばなんとかなるだろう、いざとなればお金を盗んで早足で逃げればいいや、そう思った途端、急に元気が出てきました。

足取りが軽くなります。

と、その時遠くの方から轟音が聞こえてきました。

太陽を背にしてこちらに向かってくるので、はっきりとした形は分かりませんが、相当にバカでかい物体であることは確かなようです。しかも速度も随分早いようで、見る見るうちに姿が大きくなってきます。最初は豆粒のような大きさでしたが、あっという間に巨大なナマズを平たくつぶしたような形になり、それに伴なって物凄い風が地表を覆い、辺り一帯に生えている草や木がざわめき、まるで台風のようです。

ババジ君はこんなに大きなものが空を飛んでいるのを見るのは初めてだったので、歩くのをやめ、大きな物体が飛行しているのに見とれていました。

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大きな物体は、ババジ君が立っているところから1キロぐらい離れたところまでやってくると、6本の煙を地面に垂直に吐き出しながら、ゆっくりと降りてきました。

もちろんババジ君はこの物体の正体が、遠く倭の国から自分を調査しにやってきた産土号であることを知る術もありません。

つづく

第12話

画:バビロン

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