カフェモンマルトル

text:高野雲

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樺太急行

      2017/05/24

karafuto

エトロフ遥かなり

1993年にNHKで放送されたドラマ『エトロフ遥かなり』は、1話から4話まで夢中になって見ました。

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佐々木譲・原作の『エトロフ発緊急電』をドラマ化した作品だったのですが、私はこの小説の存在を知らず、あわてて本屋さんで文庫本を買って一気に読んだものです。

その後、この作品は佐々木譲の「第二次大戦三部作」の二作目だということを知り、急いで一作目の『ベルリン飛行指令』を読み、ラストの「例のシーン」で全身鳥肌が立つほどの感動を覚え、さらに三作目の『ストックホルムの密使』も手に汗握りながら最後まで一気に読んでしまいました。

そういえば、『ストックホルムの密使』もNHKでドラマ化されていましたね。

ちょうどこれが放送されている時、私は伊豆のホテルにいたのですが、いよいよこれから面白くなるぞ!と思った瞬間、「お食事の用意ができました」とホテルの方から食堂に呼ばれてしまいました。

和風創作フレンチが売りのホテルなうえに、他に宿泊客も少なかったこともあり、「すいませーん、今テレビがいいところなので、あと1時間ぐらい待ってください」と言うわけにもいかず、部屋を後にし、食事を満喫し、部屋に戻った頃は既に番組は終わっていました。……残念!

このドラマのDVD化を臨む!

……と書いた後にアマゾンで調べてみたら、DVD化されていたのね。

これは観てみないと!

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大変 寒い

それはそうと『エトロフ~』のほうなのですが、日系二世のコードネーム「フォックス」と呼ばれているケニー斉藤という男がこの物語の主人公です。

日米開戦前夜の話です。

日系アメリカ人スパイ(ケニー斉藤)が、憲兵の追っ手を逃れながら単身択捉島に渡り、単冠湾で演習中の帝国海軍の機動部隊の様子を偵察し、その模様を毎晩アメリカの諜報機関に打電。さらに、真珠湾攻撃の可能性と、ハワイが奇襲されるであろう予想日時を打電するも……

……あとは本を読んでください。
(・∀・)b

エトロフ発緊急電 (新潮文庫)エトロフ発緊急電 (新潮文庫)

このストーリーの中で、私が一番スリリングに感じたのは、憲兵に追われながらも上野駅の列車に乗り、青森駅での検問をスルーして青函連絡船に乗り、函館到着後は、どこに向かったのかを推測されにくい切符を買うことで追っ手をかく乱。択捉島に向かう漁船に乗り込むことに成功したものの、海の上で一悶着。択捉島の目と鼻の先で船を焼き払い、冷たすぎる海水に飛び込み、ようやく上陸……という、択捉島に上陸するまでのその過程がとにかく「大変」で、その「とにかく大変」なことに手に汗握りましたね。

ドラマも小説の描写でもそうなのですが、「とにかく大変」なことに加え、「とにかく寒そう」なんですよ。

北海道や択捉島の雪、雪、雪。

冷たい海の水。

夏にビデオを見ていても、とにかく全身がブルブルするほど寒いのです。

で、寒いといえば、雪。

とにかく雪がしんしんと、容赦なく降り続けるような描写を音で表現したらどうなるのかな?と思って作ってみたのが、《樺太急行》という曲です。録音はたしか1994年だったと思いました。

上野耕路

なんで「択捉」の物語に触発された曲なのに、タイトルは「樺太」なのか?

特に大きな理由はありませんが、「択捉急行」よりも「樺太急行」のほうが語感がシックリきたから。

それと、ドラマ『エトロフ遥かなり』では、ラスト近くで、ケニー斉藤を慕っていたクリル人(千島アイヌ)の宣造が、樺太に到着し、雪原の上を希望に溢れた表情で駆け抜ける姿が印象的だったからかもしれません。

また「急行」は、「オリエント急行」のような鉄道の「急行」ではなく、「急いで行く」ぐらいの意味です。

なんだかよくわからないけど、樺太に急いで向かっている状況。雪が振りまくって、めちゃくちゃ寒い中を急げ、急げ!

曲を作り始めたときの根っこにあるイメージは、それぐらいな感じです。

特に『エトロフ発緊急電』のストーリーそのものに音で色づけしようと思ったのではなく、この作品が私の五感を直撃した「寒そう」&「雪がしんしん」をそれっぽく作ってみたのが、この《樺太急行》なのですね。

「雪がしんしん」と降り注ぐ様子は、安直にピアノの和音を「1小節8連打」にし、突拍子もない展開と、変拍子をところどころに混ぜて緊迫感のようなものを出してみました。

この突拍子もない展開や、無機質とまではいかないけれども、どことなく冷ややかな感じは、当時夢中になって聴いていた上野耕路の『レゼルヴォワール』というアルバムにインスパイアされています。

レゼルヴォワールレゼルヴォワール

上野耕路といえば、私にとってはゲルニカであり、太田蛍一の『人外大魔境』で、本当に中学生の頃から狂ったように聴きまくっていました。

大好きです、彼が作り出す音世界は。

改造への躍動(紙ジャケット仕様)改造への躍動/ゲルニカ

太田螢一の人外大魔境太田螢一の人外大魔境/太田螢一

10代の頃から狂ったように上野耕路独特の音世界に染まっていたため、おそらく彼の音楽のエッセンスの何百分の一は体内の細胞に染み込んでいたのかもしれません。

作っていく課程で、曲の展開に迷うと「上野耕路だったらどうするんだろう?」と無意識に考えながら作業を進めていたため、作曲も打ち込みも比較的スムースに進んだ記憶があります。

たぶん3日もかからなかったんじゃないかな。

そして、ブルトン・アプレゲール・テケレッツのライブのオープニングに一回だけ使いました。

客席から「?」がたくさん浮かんでいました。(笑)

記:2015/09/19

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