港湾警備指令~ヒステリック・ジャズ・テクノ

      2017/05/24

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kouwan

YAMAHA V50

もう20年以上も前の話なのですが、YAMAHAの「V50」というキーボードを手に入れた私は、このキーボードをいじるのが楽しくて楽しくて、毎日がシンセサイザーの漬けの日々の状態がしばらく続きました。

最初は説明書を読むのが面倒で、打ち込みに関してはドラムをプログラミングする方法しか分からず、打ち込んだドラムのパターンに合わせてメロディやコードは手弾きで弾いていました。

その時に作った曲が《熱帯夜》という曲なんですが、この曲に代表されるとおり、「鍵盤でエリック・ドルフィーっぽい音楽を作ってみたい!」という欲求が当時は強く、鍵盤を弾きながら素っ頓狂な音やフレーズを生み出すことを楽しんでいました。

>>熱帯夜〜ヒステリック・ジャズ・テクノ

ただし、この曲は、まだ打ち込みの方法をマスターしていない時期に作ったものです。

だから、メロディやバッキングは手弾きだったんですね。

で、少しずつV50をいじっていくうちに、次第にメロディのプログラミングの方法がわかってきました。

で、実際、音符を打ち込んで曲をプログラムしてみるわけですが、自動演奏される音は、どうも機械的というか規則的で、あまり面白くないというか、脈打つウネりのようなものが生み出せないんですね。

ま、打ち込みだから当たり前といえば当たり前なんだけど。

でも、打ち込みで再現可能な状態にしておきつつも、「旋律に躍動感をもたらすにはどうしたらいいのか?」ということを模索するようになりました。

そこで思いついたのが「打ち込み補正」です。

まずは手弾きでキーボードにリアルタイムで入力します。

当然、ヘタクソな私が鍵盤を弾くわけですから、ミスタッチも出てくるし、リズムもジャストなタイミングで奏でることが出来ず、ズレることも多いです。

しかし、そのズレが思わぬ味を生み出すこともあるのですね。

だから、そのような部分には手を加えずに、明らかなミスタッチやタイミングがズレまくったところだけ修正するのです。

1小節を1/16に分割し、1から16のジャストな数字に合わせるように微修正していくんですね。

つまり、手弾きだと、「1.9」や「2.1」のタイミングで弾いてしまった音符もあるわけですが、このようなタイミングがズレた音符は演奏後に「2」に位置を微修正するのです。

あるいは「15.9」のタイミングで弾いた音符は「16」の位置に微妙にズラして発音するタイミングをジャストな位置に直していく。

正直面倒な作業ではあるのですが、ヨレヨレなメロディが少しずつビシッと変化していく過程がとても楽しいのですね。

ただし、あまり修正しすぎてしまうと、シャキッ!としたニュアンスになりすぎてしまうので、演奏時の勢いを大切にするためにも、明らかにタイミングをミスった音符のみを探して少しずつ補正作業を繰り返すわけです。

そうすると、テクノとジャズの両方が好きな私個人の好みなのですが、ビシッ!とユルッ!のニュアンスが良い具合にブレンドされているように感じ、とても心地よい気分になれるのです。

この手法で、勢いと編集を共存させた曲のことを「ヒステリック・ジャズ・テクノ」と脳内で勝手にジャンルを作り、いろいろな曲を録音したものです。

その中でもっとも気に入っているのが《港湾警備指令》なのでした。

うーん、いま聴くと少し長いなぁ(汗)。



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プリンス キッス

この曲は、ほとんど行き当たりばったりで作った曲です。

最初は何も考えずにリズムだけをプログラムしてみました。

私はプリンスの『パレード」というアルバムが大好きで、その中でも代表曲の《キッス》という曲のドラムが面白いとかねがね思っていました。

ものすごくシンプルなんですよ。

まさに「抜き」の美学って感じ。

3拍目のバスドラの音が抜かれているところに、浮遊感というかモヤモヤ感が強調されています。

トッ・タッ・・・ッタ

って感じで。

これにギターやシンセが絡むだけで、独特なウネリが生まれているんですね。

パレードParade/Prince

まずは何も考えずに、この曲のドラムパターンを打ち込んでみました。

フィルインのような飾り打ち込みは一切抜きです。

ところが、やはりというか、単調なんですね。

ドラムパターンだけでは、やはりウネリは生まれない。

他の楽器との有機的な連携が必要だということを痛感しました。

立花ハジメ チキン・コンソメ

そこで、私はパーカッションを絡ませようと思いました。

コンガやボンゴのようなオーソドックスな打楽器の音色ではなく、デジタルっぽい音にしようと思ったのです。

で、参考にしたのは、立花ハジメの『太陽さん』。

大好きな立花ハジメのアルバムの中でもベスト3に入るアルバムです。

これに収録されている《チキン・コンソメ》という曲が大好きだったので、この曲で使われているデジタルパーカッションのパターンを参考にしました。

いや、参考というよりは、もろパクリって感じです。

太陽さん太陽さん

これで、プリンスの《キッス》とはまったく異なりますが、なんだかヘンなウネリというか、リズムの中でのストーリーのようなものが生まれました。

ハービー・ハンコック ジャック・ジョンソン

なんだかヘンな雰囲気のリズムが出来たところで、飽きてしまったので、しばらく放置。

その間、いろいろな音楽を聴きながらゴロゴロしていたわけですが、何気なく聴いていたマイルス・デイヴィスの『ジャック・ジョンソン』の《ライト・オフ》のハービー・ハンコックのオルガンがカッコいいことに気づきました。

これまでは、マイルスの力強いトランペットや、ジョン・マクラフリンのエッジの立ったギターを中心に鑑賞していたのですが、ボーッと聴いていたら、突然、元気が出るオルガンが耳に飛び込んできたんですね。

A Tribute to Jack JohnsonA Tribute to Jack Johnson

よしっ!例のリズムトラックにオルガンの音を被せよう!と思い立ち、これも最初は手引き、後ほど補正という「打ち込み補正」の方法を使いました。

最初は派手なオルガンで弾いてみたのですが、あまりシックリこなかったので、教会のオルガンっぽい音と、シンセの尖った音色の和音に音色を分けてみました。

ただ、全体的に教会のオルガンっぽい音の比率が多いと、なんだかヘンな感じがしたので、どちらかというと尖ったシンセの音をメインのバッキングの音色にしています。

旋律

最後はメロディです。

メロディも「打ち込み補正」です。

リズムとバッキングを聴きながら、最初はエリック・ドルフィー風に音数多く、音程の跳躍の激しい旋律を弾いてみたのですが、どうもしっくりときません。

せっかくのデジタルパーカッションとオルガンの和音の絡みを殺してしまう感じたしたので、今度は「間」を意識して弾いてみました。

弾くところは弾く、弾かないところは意識的に間を空けて休む。

これを意識して即興で弾いてみたのですが、いまひとつピンとこなかったのですね。

しかし、トランペット風の音色に変えたら、なんとなくシックリときたので、これで完成!ということにしました。

タイトル

この曲のタイトルは、アニメの『攻殻機動隊』というタイトルがカッコいいなと思っていたので、それに近い名前にしたいと思いました。

と同時に、私は初代ウルトラマンの海獣ゲスラが登場する回のタイトル「沿岸警備命令」もカッコいいなと思っていたので、この2つのタイトルを合体させたようなニュアンスの《港湾警備指令》にしました。

夜、少し緊迫した状況、それぐらいのニュアンスが感じられればいいや、って感じです。

ウネウネ、だらだらとした内容になってしまったのですが、個人的にはけっこう気に入っています。

短い原稿を書いている時や、タバコを吸っているときのBGMにすると尺的にちょうど良いのですよ。

だから、たぶんこれまで自分が録音した曲の中ではもっとも再生回数の多い曲かもしれません。

記:2015/09/26

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