カフェモンマルトル

text:高野雲

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熱帯夜〜ヒステリック・ジャズ・テクノ

      2016/04/30

ドルフィー大好き時代

私は学生時代からエリック・ドルフィーが大好きで、自分の体内の血の一部はエリック・ドルフィーのアルトサックスやバスクラリネットが奏でる旋律が流れているんじゃないかと思うほどでした。

そのことは、こちらの番組の冒頭でも話した記憶があります。

ドルフィーのような跳躍が激しく、鋭い旋律を奏でられる人間になりたいと考えていたわけですが、あいにく私はサックスは吹けないし(3日トライしたけど頭のビリビリに耐えられなくなり断念)、バスクラは難しそうなので手を出せずじまい。

その頃はベースばかりを弾いていたのですが、さすがにベースではドルフィーのような表現は無理です。

しかし、私は幼い頃に通っていたヤマハ音楽教室の幼児科とジュニア科アンサンブルのお陰で鍵盤楽器も多少弾けたこともあり、「もし自分がドルフィーになるなら鍵盤楽器しかないだろうな」などと思い、時折、家にあるピアノやシンセサイザーで滅茶苦茶なフレーズを弾いて遊んでいました。

そんなある日、もうかなり過去のことなので、どのような経緯で入手したのかは忘れてしまいましたが、ヤマハのシンセサイザーV50を手に入れたんですね。

YAMAHA V50

このシンセサイザーは、鍵盤楽器としては、鍵盤の数が少なめなので、ピアノの代用品として弾くにはちょっと難があるかなとは思ったのですが、なにしろFM音源でプリセットされた音色が100種類もあったし、なにより打ち込みが可能だったのが良かったのです。

打ち込んだデータは、いまや懐かしのフロッピーディスクで保存できることも、当時としては嬉しい機能でした。

これを手にいれた私は、しばらくは猿のようにV50をいじりまくっていたように思います。

難があるとすれば、ドラムやパーカッションなどの打楽器類の音がちょっと安っぽい(笑)。

特にスネアの音色が平坦というか奥行きと色気があまりないんですよね。

でも、贅沢言っても仕方がない。いざとなったらMIDIでドラムマシンに繋げて同期させればいいだけの話だし。

熱帯夜

で、そんなこんなで、V50を手に入れて最初の頃に作って録音した曲がこちら。

真夏の夜に発作的に作ったので、タイトルそのまま《熱帯夜》。

録音した時の記録が残っていないのですが、結婚する1〜2年前に実家で作ったものなので、おそらく1993年か94年頃でしょう。

もう20年以上も経っているんだ!

これを録音した時は、V50の使い方をまだマスターしていなかったので、とりあえずドラムのパターンだけはなんとか打ち込み、あとは手弾きです。

この手弾きの素っ頓狂で跳躍の激しいフレーズは、意図的にドルフィーっぽさを意識しています。

本当はもっと跳躍したかったんだけど、私の技量やイマジネーションでは、このあたりが限界でした。

まずは、リズムにあわせて、ほとんど即興でテーマのメロディを録音。

その後は、別の音色でエレピっぽい音を重ねて録音しました。

で、お次はベースの録音です。

フェンダー75年ジャズベース

私がベースをはじめたのは、JAPANのフレットレスベーシスト、ミック・カーンの影響なので、当然、弾いているベースはフレットレスです。

とはいえミック・カーンのようにウォルではなく、当時25万円ぐらいで購入したフェンダー75年製のジャズベースです。

ボディを裏返すと、ボディとネックの三角の金属プレートに三点止めが施されていることが特徴のベースですね。

また、指板のポジションマークがドットではなく、長方形なことも特徴的なベースで、有名なベーシストを挙げるとすれば、やはりマーカス・ミラーがもっとも有名でしょうね。

しかし、私が購入したものは、最初からフレットレスに改造されたものでした。

ピックガードは取り外されていて、塗装もハゲハゲ。

このように改造されていた状態だったので、安い値段で購入することができたのです。

ただ、個人的には、もう少しフレットレスベース特有の「甘い音色」を出したかったので、購入後、ピックアップはバルトリーニのものに付け替えてもらいました。

バルトリーニ

このバルトリーニのピックアップは、当時ベースを習っていた時の師匠、池田達也氏から譲ってもらったものです。

「お金はいらないけど、今、君が読んでいる本と交換しよう」という提案で、当時、私が夢中になって読んでいたデヴィッド・サドナウの『鍵盤をかける手』という本と交換しました。

私にとっては、すごく良い条件の物々交換で、このことは今でも感謝しています。

バルトリーニはアクティブ用のピックアップで、本来であればボディをザグッて、電池を埋め込むスペースを確保しなければならいのですが、師匠からパッシヴのままでも大丈夫だよというアドバイスをいただいたので、アクティブにはせず、ピックアップを交換したのみの状態で、しばらくこのベースを愛用していました。

ライブとかでは、出力が落ちてしまい、パンクバンドのようなステージでは、ロックのベースとしてのアタックやパンチは出せなかったものの、当時私がイメージしていた「ちょっと輪郭がボンヤリして甘い音」が出せたので、嬉しかったですね。

バダスのブリッジ

私はベースを弾く時のピッキングが強いみたいで、弦のテンションもキツめというか、固めのほうが好みです。

ですので、ブリッジもフェンダーのオリジナルのものからバダスのものに交換しました。

ほんと、この頃の私は、ベースを改造しまくりです。

その後、もう少しお金持ちになってからは、フェンダーというベースが持つオリジナルな良さに目覚め、改造しないオールド大好き人間になるのですが、まだこの頃は23〜24歳の、まだまだ坊やです。

とにかく、若さと勢いに任せて、改造しまくりのベースを愛用していました。

そして、この改造しまくりのベースに、エフェクトかけまくりで《熱帯夜》の伴奏をしてみたのです。

ミック・カーンを意識

コーラスとマクソンのアナログティレイをかまして、少しでもミック・カーンっぽい音色を出そうと腐心したのですが、やっぱりミック・カーンのあの音色、あのニュアンスは、彼にしか出せない唯一無二のものですね。

それでもなんとか、この曲のイメージに合うよう疾走感を出すと同時に、ほとんど即興で弾いたテーマの旋律を際立たせるようなベースを弾いてみました。

やり直しなしの一発録りだった記憶があるので、ところどころタイミングが遅れたりズレたりしています。

自分がキーボードで弾いた音を聴きながら、その場で反応しようとして、結局のところ反応が遅れてしまっていたようです。

でも、どうせ暇つぶしの一人遊びのようなものだから、「ま、いいか」という気分で、一丁あがり!

キーボードもベースも録り直しなしで完成させました。

ヒステリック・ジャズ・テクノ

これで味をしめた私は、ドルフィーのスピード感や、めまぐるしい跳躍を、なんとか打ち込み音楽に代入できないかと考えはじめ、自分の頭の中に「ヒステリック・ジャズ・テクノ」というジャンルを作り、しばらくはこのテイストで曲作りをしていくことになります。

この《熱帯夜》を録音した時点では、まだ打ち込みはドラムとパーカッションのみでしたが、少しずつV50の使い方を覚え、キーボードのバッキングなども打ち込みを取り入れるようになっていきます。

机の引き出しの中にはいっている膨大な量のカセットテープの中を探せば、その後の私が作った「ヒステリック・ジャズ・テクノ」な音源が見つかるかもしれません。

面白そうなものを見つけたら、またYouTubeにアップしてみようかなと考えています。

とりあえず、本日は私の恥ずかしい過去の音源、《熱帯夜》を晒してみました。
 ̄∇ ̄)

記:2015/09/15

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