カフェモンマルトル

text:高野雲

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プラタナスの見える丘/ディファレンシア

      2016/04/30

puratanasu

私が学生時代、ベースを買った直後にはじめたバンド、ディファレンシア。

その詳細に関しては、こちらをご覧いただくことにして、
>>シーサイド・メモリー/ディファレンシア

個人的に、ディファレンシアの曲の中で、私がもっとも好きだった曲は《プラタナスの見える丘》でした。

この曲は、私がボーカル&ギターのアオキ君と、原宿の喫茶店で、たまたまプラタナスの話題になった際に、私が冗談半分で「プラタナスがテーマの恋愛曲作ってよ」とお願いをしたら、2日と置かずにアオキ君が作ってきてくれた曲なんですね。

小学生の頃、私は数年間、西宮に住んでいたんですけど、その時に通っていた小学校の校庭にはプラタナスがたくさん植えてあったんですね。

そこでブイブイ(甲虫の一種)をたくさん獲って、捕獲した数を競って遊んでいたんだよ~みたいな話をしていたんですが、そんな話題から、こんなにもシットリとした曲を作詞作曲してしまうなんて、アオキ君の妄想力、いや創造力おそるべし!

なかでも、私がこの曲を好きな理由は、Aメロ、Bメロ、サビへと展開する曲調の変化が素晴らしいからなんですね。

しっとりとしたAメロの「緩」が、Bメロになると「急」になり、サビで「広」がる。

「序破急」ではなく、「緩急広」。

かなり曲調が変わるんですけど、それが何の違和感もなくスムースにつながり、曲調も歌詞の世界も広がってゆくところが素晴らしいのです。

ギターの弾き語りで録音されたカセットテープを聴き終わると、これは素晴らしい、アレンジし甲斐がある、バンド組んだら絶対やろう、などと私がこの曲を絶賛したんですが、アオキ君は嬉しそうでありながらも、あまりピンと来ていない様子でした。

いつもどおりにサクッと作ったつもりの曲が、なぜ今回に限ってこんなに絶賛されるんだろうというような不思議な顔をしていました。

記事下にYouTubeにアップした音源を貼っておきましたが、実際、最初にアオキ君が録音してきたバージョンは、これよりもテンポが速かったんですね。

この曲の持つ世界をもう少しドラマティカルにしたかった私は、バンド結成後は、テンポを落として演奏することをメンバーにお願いしました。

しかし、テンポを落とすと、今度は、「急」の部分のBメロにメリハリがつかなくなってきてしまう。

そこで、ドラムのシューちゃんと打ち合わせをしながら、何度も何度も私がベースを弾き、シューちゃんがドラムのパターンを考えながら叩くということを繰り返しました。

ディファレンシアのメンバーは、アオキ君とキーボードのミズオカ君は違う大学だったけど、ドラムのシューちゃんと私は同じ大学で、しかも同じジャズ研に所属していたので、毎日ジャズ研の部室でドラムとベースを合わせながら試行錯誤する時間があったんですね。

いろいろなパターンで合わせているうちに、結局、ドラムはリムショットを少し多めに叩けば、Aメロとは打って変わった躍動感が創出され、さらにサビを迎えるまでの良いアクセントになるんじゃないかという結論に達しました。

サビの部分では広がりを出したいので、ライドシンバルを多用する展開にしました。

ドラムのパターンがBメロとサビでは、かなり異なるので、いきなり曲調が変わってしまうのもヤダなと危惧していたんですが、それは杞憂でした。

キーボードのミズオカ君が、Bメロのラストの部分からサビにかけて、とても上手に違和感なく橋渡しをしてくれたのです。

現在、プロピアニストとして活躍しているミズオカ君(水岡のぶゆき)ですが、この頃から、とても注意深くヴォーカルを盛り上げるようなバッキングをつけてくれていました。

練習終了後の打ち上げの際に、すごく盛り上げ方が上手だよね、みたいな話をしたのですが、彼は歌詞をきちんと読み込むタイプのピアニストだったようですね。

ミズオカ君自身も作曲のみならず、作詞もしていたこともあり、ひとつひとつの言葉を読み込み、そこに描かれる背景を考えながら、音として組み立ててゆくというようなことを話していましたね。

アンサンブルの話に戻りますと、初期の段階でのアオキ君はギターを弾きながら歌っていたのですが、やはりこのナンバーも《シーサイド・メモリー》同様、ミズオカ君の美しいハーモニーを前面に押し出したかったので、これもリーダー権限で、ギターを弾かずにヴォーカルのみに専念してもらいました。

YouTubeにアップした音源は、たしか2回目か3回目のリハをカセットテープに録音していたものです。

私のベースの音があんまり聴こえませんが、この頃の私は、まだ本当にベースの初心者だったし、しかもフレットレスでピッチが悪かったので、これぐらいのバランスのほうがアンサンブルを汚さず、かえって良かったのかもしれません。

結成したての、まだまだ稚拙な演奏をするバンドだったのですが、なぜかこの《プラタナスの見える丘》に関してだけは、今でも名曲だと思ってますし、歌詞の世界は少々クサくはあるのですが、「青春っすね~!」としか言いようがない甘酸っぱさがあります。

だから、この録音をプレイバックするたびに、もし人生をやり直せるのなら、今度は男子校ではなく男女共学の高校に入学して、放課後は、好きな女の子と自転車に乗りながら毎日楽しく、ちょっと照れくさい気持ちで帰路につくような高校生活を地方の街で送りたいなーなんて、しょーもないことを考えてしまう自分がいるのでした。

記:2016/03/06

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