バグス・オパス/ミルト・ジャクソン

      2021/02/13

ゴルソンナンバーもよく似合う

こういう音源を珈琲の似合うジャズと言うのだろう。

いや、珈琲、木目のインテリアといった、ジャズ喫茶的な空間で聴くからこそ、良さが染みてくるアルバムとでもいうべきか。

ミルト・ジャクソンのリーダー作だが、ベニー・ゴルソン&アート・ファーマーコンビの邂逅アルバムでもある。

ミルトのヴァイブはウエス・モンゴメリーのギターにしろ、マイルス・デイヴィスのトランペットにしろ、ジョン・コルトレーンのテナーサックスにしろ、どんなに個性の強いプレイヤーの演奏にも溶け込んでしまう親和性の高さを誇る。

それでいて、一つに溶け合った音色に埋没するというわけでもなく、その音の中からは「ミルト!」としか言いようのない存在感をも放つところが、さり気なく凄い。

したがって、彼は、誰とでも共演できるだけのキャパシティがあるだけではなく、相手の中に溶け込みながらも、自分自身の個性をキチンと出せるだけの音の存在感があるのだ。

このアルバムは、《クリフォードの思い出》や、《ウィスパー・ノット》といったベニー・ゴルソンの曲を取り上げていることからも分かるとおり、ゴルソン色の強い内容となっている。

しかし、やっぱりミルトの味がじわじわと湧きでているところが、ミルトのリーダーアルバムらしい。

強烈に主張するわけでもないのに、ミルト色が色濃く漂うこの雰囲気。

もとより、ゴルソン=ファーマーのコンビは2管が繰り出す音のアレンジが美しいが、これにミルトのヴァイブが加わると、さらに美しいハーモニーの誕生だ(ハーモニーは3音以上の音の重なりをいうので、ゴルソンとファーマーの2管の音だけでは、ハーモニーとは言わない)。

演奏に溶け込み、なおかつ、ふくよかさを加え、どんな相手の土俵の中でも、きちんと自分を出せるミルトのヴァイブ。

やっぱり、この人は名手だ。

そして、もう一人の名手、トミー・フラナガンの演奏の影となりながらも、しっかりと骨格を形成する柔軟なピアノにも感服。

ヘヴィでガツンとくる要素は無く、むしろ柔らかく極上のリラクゼーションを提供してくれる。

だからといって、緩いBGMとは無縁な、最初の一音から最後の一音まで聴かせてしまう演奏。

さらに、名曲揃いで名演揃いな文句のつけどころのない内容。

やはり、『バグズ・オパス』は、珈琲の似合う極上ジャズだ。

記:2008/07/23

album data

BAGS OPUS (United Artists)
- Milt Jackson

1.Ill Wind
2.Blues For Diahann
3.Afternoon In Paris
4.I Remember Clifford
5.Thinking of You
6.Whisper Not

Milt Jackson (vib)
Art Farmer (tp,flh)
Benny Golson (ts)
Tommy Flanagan (p)
Paul Chambers (b)
Connie Kay (ds)

1958/12/28-29

 - ジャズ