ザ・ケイプ・ヴァーディーン・ブルース/ホレス・シルヴァー

   

名盤の1年後の録音

名曲《ソング・フォー・マイ・ファーザー》の録音からちょうど1年後に録音されたこのアルバム。

内容は、《ソング・フォー・マイ・ファーザー》が収録された同タイトルのアルバム『ソング・フォー・マイ・ファーザー』にブースターロケットをくっつけたパワーアップ盤といえば、話が早いと思う。

ウディ・ショウにJ.J.も参加!

まずは、管楽器のフロント陣がより一層強力になっている。

ジョー・ヘンダーソンは『ソング・フォー・マイ・ファーザー』から変わらずだが、トランペッターがウディ・ショウになり、曲によってはJ.J.ジョンソンのトロンボーンも加わるという「武装強化」が施されている。

また、リズムのプッシュ力もより一層強力になっており、ゆったりとした印象の《ソング・フォー・マイ・ファーザー》とは異なる、グングン前へと突き進んでゆく力強さがアルバム全体から感じられる。

この強力なリズムの土台の上で繰り広げられるジョーヘンの激しいブロウや、ショウのモーダルなアプローチが、時に上乗せされるところが興奮度が高い理由の一つ。

しかし、どんなにフロントがフリーキーなアプローチ一歩手前の状態まで熱くなろうと、絶対に無調状態には陥らないところがミソ。

ボブ・クランショウのベースがガッシリと調整の根っこを支え、シルヴァーのたたみかけるかのようなピアノの和音が、自作曲とは別の世界へ飛んでゆかぬよう、しっかりとフロントの尻尾を抑えつけている。

このギリギリのところのせめぎ合いが、難解さを感じさせずに、むしろ平易な曲の輪郭を終始保ったまま、演奏をスリリングなものに昇華させているのだ。

ラテンタッチ、ファンキーニュアンスをたずさえたシルヴァーの曲作りも、『ソング・フォー・マイ・ファーザー』の頃よりも、より一層洗練度を増しているこのアルバムは、付随する余剰物をいさぎよく剥ぎ取り、曲のシェイプを引き締めることにより、かえって演奏に求心力と勢いをもたらすことに成功している。

「骨密度」の高い演奏群

世間的には『ソング・フォー・マイ・ファーザー』が名盤とされているが、このアルバムが持つ贅肉を絞り、より一層シャープなたたずまいに引き締めた『ザ・ケイプ・ヴァーディーン・ブルース』も負けず劣らずの名盤だと思う。

この2枚のアルバムの人気・知名度を左右したのは、結局はタイトル曲の「口ずさめ度」「口ずさめない度」のような気がしてならない。

もちろん《ケイプ・ヴァーディーン・ブルース》のメロディもキャッチーではあるが、《ソング・フォー・マイ・ファーザー》ほど鼻歌に向いた旋律ではないのだ。

しかし、アルバムの看板曲のキャッチー度はさておき、演奏の「骨密度」の高さは、断然、『ザ・ケイプ・ヴァーディーン・ブルース』に軍配を上げたい。

記:2009/05/15

album data

THE CAPE VERDEAN BLUES (Blue Note)
- Horace Silver

1.Cape Verdean Blues
2.African Queen
3.Pretty Eyes
4.Nutville
5.Bonita
6.Mo' Joe

Horace Silver (p)
Woody Shaw (tp)
J.J.Johnson (tb) #4-6
Joe Henderson (ts)
Bob Cranshaw (b)
Roger Hmuphries (ds)

1965/10/01 #1,2,3
1965/10/22 #4,5,6

 - ジャズ