《チェイシン・ザ・トレーン》に燃える!

   

長いが飽きない

ジョン・コルトレーンといえば、《チェイシン・ザ・トレーン》。
ちょっと強引かもしれないけど、私の中にとってのコルトレーンといえば、この一曲で決まり!

ピアノの抜けたドラムとベースのトリオで延々と続く長尺演奏だが、まーったく飽きません。

コルトレーンは、吹けば吹くほど、どんどん勢いを増し、出てくるフレーズも確実に新しいうえに、生命力が漲っている。

おそらく、エルヴィンのドラムの煽りがポイントなのだと思う。

というのも、このヴィレッジ・ヴァンガードでのライブのコンプリート音源を紐解くと、ドラマーがロイ・ヘインズで演奏されているバージョンも収録されているのだ。

ところが、彼が参加したバージョンの演奏は、このバージョンに比べると、う~むイマイチ。

というか普通。

エルヴィンの演奏を聴いてしまった後に聴くと、リズムもテンポも緩いし、締まりがなく感じる。

もちろん悪くはないのだが、普通のハード・バップといった趣きで、音の勢いも、未知な領域に踏み込むぞ!という気迫も感じられない。

もちろん、ヘインズは優れたドラマーだが、この演奏には向いていなかった。

エルヴィンの前へ前へと強引にプッシュする強い推進力が必要だったということが、エルヴィン以外のドラマーの演奏を聴くことで浮かび上がってくる。

コルトレーンの黄金のカルテットにとって、エルヴィン・ジョーンズというドラマーはなくてはならない存在だということが、とてもよくわかる演奏が《チェイシン・ザ・トレーン》なのだ。

明らかにコルトレーンは、エルヴィンからエネルギーを注入され、エルヴィンのドラムからインスピレーションを受け、エルヴィンのドラムに励まされているのだ。

エネルギッシュさだけではなく、フレーズのひとつひとつが思慮深い。

まるで、瞬間ごとに出す音を考え、推敲しながらひとつの曲を練り上げている感じがする。

コルトレーンは、言いたいことの多さと、表現の折り合いがつかずに、気がつくとズルズルと知らず知らず演奏が長くなってしまう傾向もあるが、この演奏に関してはその限りではない。

非常に知的なフレーズと、アドリブの構成のバランスの良さを感じる。

なお、なぜタイトルが「コルトレーンを追いかけて」なのかというと、録音技師が、サックスを吹きながら歩き回るコルトレーンを必死でマイクで追いかけまくったから、とのこと。

この長尺演奏の中、追いかけまくるの、大変だったに違いない。
でも、追いかけまくってくれたからこそ、このような素晴らしい演奏が、今、我々は気軽に聴くことが出来る。

感謝感激雨あられ。

記:1999/03/25

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