ファインディング・ガブリエル ブラッド・メルドー

   

ジャコ・パストリアスもパット・メセニーも卓越した楽器奏者であると同時に、自分がメインに奏でる楽器以外にもたくさんの音が頭の中に鳴っていた。

それが結実したのが、ジャコの場合は『ワード・オブ・マウス』であり、メセニーの場合は『シークレット・ストーリー』だと思うんだけれども、両者ともに、ある種、狂気の力技のようなもので一種の楽園サウンドに昇華させていたように感じる。

同様に、メルドーも鍵盤以外にも頭の中には様々な音が鳴り響いていたことがわかる一枚が『ファインディング・ガブリエル』だ。

メセニーやジャコの大作がチープなたとえで「楽園サウンド」とするならば、メルドーの場合はタイトルからして「天国サウンド」?

コーラスを多用したゴージャスアンサンブルの多くは、ともすれば甘くぼやけたサウンドに陥りがちな一歩手前なところで、マーク・ジュリアナのシャープなドラムがビシッと締めてくれているという寸法。
ほんと、彼のドラム、昔だったら小室哲哉が「時代はジャングル~」なんてニヤッとしていた打ち込みのジャングルビートを人力で叩いているところが現代ジャズドラマーっぽいシャープさに溢れていてカッコいいですな。

楽器演奏の達人かつ才人は、時としてプレイヤーにとどまらず、音楽家としての才能もこのような作品で遺憾なく発揮しております。

どこまで意識したのかは分からないけれど、TOTOの《99》チックな曲もあって楽しい。

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