一子さんのピアノは「ビシッ!」が良い

   

最初とラストがピアノソロ

橋本一子さんのアルバムの中でも、特に思い入れが深い作品といえば、『VIVANT』というアルバムです。

VIVANTと書いて「ヴィヴァン」と読む。
発売当時、夢中になって聞いた記憶があります。

VIVANTVIVANT

冒頭の《遊園地の恋》は、ロマンティックかつ、サティの香りも感じられる優雅な趣き。
そしてラストを飾る《フィーネ》。
こちらは、スタティックなドビュッシーを感じました。
両方ともピアノソロです。

もう、この2曲を聴くだけで、幼い頃過ごした横浜の元町の商店街や、港が見える丘公園のフランス坂、そして通っていた幼稚園がある山手カトリック教会周辺の景色が思い浮かんでくるんですね。

もっとも、一子さんのご出身は同じ港町でも神戸ですから、あんまり関係ないといえば関係ないんだけれどもね。

で、アルバム『ヴィヴァン』においては、一子さんのピアノソロがアルバムのアタマと最後にサンドイッチになっているからこそ、すっごく、このアルバム全体が締まっているように感じます。

凛とした響き

『VIVANT』の中では、個人的には攻撃的な《D.P.》や、《ダンス天国》が好きなんですが、そういえば、《D.P.》の強烈なパーカッシヴなコードの響きは、今のUb-Xの《凛》に繋がる「凛とした」響きですね。

この「ビシッ!」としたコードの打鍵があるからこそ、私は長らく一子さんのファンであり続けているのかもしれません。

そうそう、今のところ一番新しい『ベガ』の冒頭の《コール・ミー》でも、曲の要所でビシッ!とこの響きが使われています。
ほんと、このビシっ!がいいんですよ。

モンクの和音がコキン!だとすると、そしてハービー・ハンコックの和音がカキン!だとすると、一子さんの和音はビシッ!なんです(笑)。

冷たく、そして鋭く光る。
かっこいい~!

そういえば最近、一子さんの旧作が再発されました。
買い逃していた人は買おう!

『ムード・ミュージック』とか、『ハイ・エキセントリック』とか、いいですよ~。

記:2007/07/15

 - ジャズ