JAZZ遺言状/寺島靖国

   


JAZZ遺言状 辛口・甘口で選ぶ、必聴盤からリフレッシュ盤まで600枚

遺言状?!

寺島靖国さんの新刊『JAZZ遺言状』を読みました。

その感想をこれから書こうと思いますが、手っ取り早く知りたければ、動画を見た(聞いた)ほうが早いかも?

「遺言状」という言葉には一瞬ドキッとしますが、まだまだ寺島氏はお元気であられます。

「遺言状」というかジャズを聴くための「提言」は、「まえがき」に記され、残りの本編は、雑誌『Jazz Japan』に連載されたエッセイをまとめたものになります。

つまるところ、ジャズ文筆家

この本を読んで改めて感じたことは、とにもかくにも、寺島さんは「ジャズ評論家」ではなく、「ジャズ文豪」なんだなという思い強くしました。

いや、文豪とまではいかないにせよ、ジャズをインスピレーションの源とする「私小説家」といっても良いのではないでしょうか。

雑誌連載のエッセイ(コラム?)を集めたものということもあり、エッセイとしてはとても面白く読めますし、それこそ小説家が箸休めに新聞や週刊誌にエッセイを書いているという風情なのです。

きっと、寺島さんは小説家になりたかったに違いない。

そして、雑誌から毎回お題目を与えられたエッセイを書くことによって、「うーん困った困った」「締め切りが迫っているのに筆が進まない」というような、「プチ小説家気分」を楽しんでおられる様子が浮かびます。

それで、単に「締め切りに追われて困っている小説家ごっこ」に終始するだけなら、文字通り「作家ごっこ」で終わりなんですが、前半は「困った、困った」とボヤきつつも、後半からはきちんと落とし前をつけてしまうところ、つまり自爆せずに、ちゃんと読ませてしまう力量が寺島さんの筆力だと思います。

前半の「困った、困った」も、ラストにつなげるための伏線だったんじゃないかとすら思えてしまう。

寺島さんが、もしジャズマンだったら、もっと限定してテナーサックス奏者だったら、ロリンズやショータータイプのアドリブを演奏する人になっていたんじゃないか?

そんなことを考えながら、楽しく最後まで読める本でした。

もっとも、1つのお題目に対して8枚の推薦ジャズアルバムを掲げなければならないのですが、やはり私の好みと一致するアルバムは少なかったかな。というより、そもそも、知っているアルバムが少なかったということもあるけれど。

残念ながら、寺島さんのエッセイを読んで、「よし、聴いてみよう!」という気分になるアルバムは少なかったのですが、エッセイの文章は抜群に面白いので、ジャズの知識がそれほど無い人でも、楽しめるんじゃないかと思います。

記:2019/01/07

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