ソロ/セシル・テイラー

      2022/09/09

繊細さを味わえるソロピアノ

テイラーのデリケートな面を捉えた1枚だ。

一言で言えば「精妙」。

ピアノソロというフォーマットに加え、このアルバムは録音が良いため、他の作品以上にピアニスト、セシル・テイラーの細やかさを味わうことが出来る。

タッチの違い

1973年の来日時に、公演の合間を縫ってスタジオ録音されたこのアルバムは、非常に音がデリケートなことをまず強調しておきたい。

1973年のセシルの来日公演といえば、アルトサックスにジミー・ライオンズ、ドラムにアンドリュー・シリルを従えたトリオ編成での演奏だが、コンサートの模様が収録されているアルバム『アキサキラ』を聴けばわかるとおり、それはそれは尋常ならざる体力と集中力と精神力が放出された、それこそ暴風雨のような演奏だった。

しかし、これと同時期に録音されているピアノは、まるで同一人物が同時期に弾いたピアノなのかと耳を疑うほどタッチに違いがある。

もちろん、演奏内容はまぎれもなくセシル・テイラー以外のなにものでもないのだが……。

レンジの広い表現力

このスタジオで録音された音源は、空気の震えまでもが封じ込められているのではないかと感じるほどだ。

よって、今まで、ただ鍵盤をガンガンと打楽器のように叩きまくっているかのような一本調子の打鍵音のイメージしかない人は驚くことだろう。

なんとレンジが広く、繊細なピアノなのだろうか、と。

もちろん、凄まじい打鍵から、まるで朝露から雫がしたたるかのような繊細なタッチまで、まるでテイラーのピアノは、自然の営みそのもの。

彼の表現力の広さを思い知るには、最適の一枚だし、間違いなくピアノを自在に操るホンモノの巨匠だということを納得できる一枚だ。

集中して聴いていると、いつの間にか時が経つのを忘れてしまうほど。

記:2010/03/22

album data

SOLO (Trio)
- Cecil Taylor

1.-Lono-
 Choral Of Voice (Elesion)
 Lono
 Asapk In Ame
2.-1st Layer Part Of Indent-
 Indent
 1/2 Of First Layer
 2nd 1/2 Of First Layer

Cecil Taylor (p)

1973/05/29

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YouTube

セシル・テイラーの『ソロ』については、YouTubeの動画でも語っています。

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