雑想 2001年2月
2022/01/26
ロリンズ オレオ
ソニー・ロリンズ作曲の名曲《オレオ》は、スタンダードナンバー《アイ・ガット・リズム》のコード進行を土台にしたナンバーだ。
マイルス・デイヴィスのリーダー作『バグズ・グルーヴ』に収録されたバージョンが初演となる。
由来はオレオクッキーかららしく、スタジオ内で、ささっと作曲したらしい。
そして、いざレコーディング。
マイルスのトランペットは力強いアドリブを繰り広げる。
さすがクレバーな彼のこと、この曲の核心を見極めたうえで新たに価値を付け加えるような自信たっぷりのソロを繰り広げる。
対して作曲者のソニー・ロリンズなのだが、いまひとつ暖まっていない。
音数少ないアドリブから出発して、少しずつフレーズを小出しにしながら盛り上がろうという目論見なのか、1コーラス目のアドリブは、テンション低い。
次いで2コーラス目だが、1コーラス目の控えめな雰囲気が続き、いまひとつ盛り上がりに欠ける。
ラストのほうで、ようやく盛り上がりそうな気配を見せたかと思うと、ホレス・シルヴァーのピアノソロに移行してしまう。
ホレスのピアノは、なかなかカッチリとしていて小気味良い。
ケニー・クラークのブラッシュワークも勢いが増している。
作曲者であるはずのロリンズが、いまひとつ精彩を欠いているのがなかなかに興味深い。
自分が作ったメロディの初演は初めてなのかもしれないが、このBフラット循環のコード進行は、ロリンズにとっては、もう何十回、何百回と繰り返し演奏しているはずの流れなのだ。
その時はアイデアがひらめかなかったのか。
それとも、自分なりに控えめに始めて盛り上げて終わるという設計図を立てていたにもかかわらず、思ったようにアドリブを展開できずに終わってしまったのか。
そのあたりが興味深い。
ロリンズは、後年、名盤『サキソフォン・コロッサス』を録音するが、《セント・トーマス》のアドリブでも、最初はフレーズ小出しにして、最後は大いに盛り上げてアドリブを終える。
《オレオ》の演奏も、本当はそのような流れにしたかったのかもしれない。
しかし、いまひとつ気分がノラなかった、あるいは盛り上がりの取っ掛かりを見つけられなかった、などの事情で、中途半端な状態でアドリブを終えることになったのだろうか。
レニー・トリスターノの弟子
リー・コニッツの他にも、レニー・トリスターノの弟子はいる。
まずは、テナーサックスのウォーン・マーシュ。
ギタリストのジミー・レイニー、ビリー・バウアー。
ピアニストのルー・レヴィ、サル・モスカ、ロニー・ボール。
トランペッターのドン・フェラーラ。
ベーシストのピーター・インド。
皆白人だというところが興味深い。
ちなみに、弟子というわけではないが、日本では、ギタリストの高柳昌行が一時期、かなりトリスターノの理論を研究していた。
彼のリーダー作、『クール・ジョジョ』は、かなりよいところまで、トリスターノの音楽テイストに接近している。
ジョン・ヘンドリックス フレディ・フリーローダー
どんなメロディにも歌詞やスキャットをつけてしまうジャズ・ヴォーカルの才人、ジョン・ヘンドリックスの力作『フレディ・フリーローダー』は、マントラ(マンハッタン・トランスファー)をはじめ、ボビー・マクファーリン、ウイントン・マルサリス、ベイシー楽団、トミー・フラナガン、スタンリー・タレンタインなど、超がつくほどの豪華メンバーを集めて録音した意欲作だ。
バラエティに富んだ変化自在なサウンドとヴォイス。
ベイシーナンバーに、マイルスのブルース(タイトル曲)、モンクのリズマニングなど、曲もジャズファンにはお馴染みなものが多く、最初から最後まで1ミリの隙も無く楽しませてくれるアルバムだ。
春がいっぱい 大村憲司
最高に尖っていた頃の坂本龍一、矢野顕子、高橋幸弘の“あのテイスト”を楽しめるアルバム。
同時代を経験した人ならきっと分かると思うんだけど、全盛期のYMOが持っていた“あの磁力”を今でも、いや、今だからこそ、強く感じることが出来るアルバムなのだと思う。
《ファー・イースト・マン》が昔から大好き。
▼収録曲
1. INTENSIVE LOVE COURSE
2. UNDER HEAVY HANDS AND HAMMERS
3. SEIKO IS ALWAYS ON TIME
4. FAR EAST MAN
5. KNIFE LIFE
6. 春がいっぱい (SPRING IS NEARLY HERE)
7. THE DEFECTOR
8. INAUDIBLE
9. MARS
10. THE PRINCE OF SHABA
サブコンシャス・リー 永久未来名盤
リー・コニッツの『サブコンシャス・リー』。
たぶん、プレスティッジ・レーベルの中では、もっとも好きなアルバムだ。
たぶん、リー・コニッツのアルバムの中でも、もっとも好きなアルバムでもある。
トリスターノのピアノも冷ややかに「立って」いるし、ギターノビリー・バウワーのサポートも素晴らしい。
高度な音楽技法のみならず、ピンと張りつめた空気や、音に対峙する美学のようなものまで、なにからなにまで五感に訴えかけてくるもの多し。
栄養たっぷり、心の名盤なのだ。
しかも、大昔の録音なのに、21世紀に聴いても、なぜか新しい。
たぶん、50年後に聴いても古さを感じない永久未来音源なのかもしれない。